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釧路湿原と湖

6月30日(水) 曇り

[ 行程 ] 
釧路 R44・R391 ==> 遠矢 [一般道] ==> 細岡展望台 [一般道] ==> 達古武 R391 ==> 
塘路湖 R391・D1060 ==> コッタロ湿原展望台 D1060・R391 ==> シラルトロ湖 R391 ==> 
標茶 R274 ==> 鶴居村・雪裡 D1093 ==> 阿寒町阿寒湖畔 R241 ==> 阿寒湖 R241 ==> 
阿寒湖畔展望台 R241 ==> 弟子屈 R391・[52] ==>摩周湖  [52] ==> 屈斜路湖 [52] ==> 
仁伏温泉 
 (注) 道路番号の「R」は国道、「D」は道道

[ 釧路湿原の展望台 ]
 今朝もスッキリとした目覚め。寝過ごさないようにと携帯目覚時計を持ってきて、毎日6時にセットしているが、何時も決まったように目覚時計より早く起きる。北海道旅行も4日目に入ったというのに疲れは感じない。考えてみれば、夜は10時前に就寝、朝は6時に起床。こんな規則正しい「質実な生活」は2年半前の入院時以来のことだ。

 いつものように7時半にホテルを出発。空は朝からドンヨリ曇っている。ちょっとイヤな予感。今日は、今回の旅行の中でも最も楽しみにしていた釧路湿原へ行けるとあって、心は弾んでいる。

 釧路湿原は、面積がなんと17,674.7haで、日本一の広さを誇っている。昨日見た霧多布湿原でもその広さに圧倒されたのだが、更にその5.6倍もあるというから想像もつかない。因みに世界最大規模の湿原を調べてみたら、ブラジル・ボリビア・パラグアイの三カ国にまたがる世界遺産「パンタナール」で、総面積は日本の本州とほぼ同じ約23万ku(JTB調べ)。これはちょっと別格。

 ホテルを出て、車は国道44号線から391号線へ入り、20分もしないうちに「細岡展望台」への分岐点「遠矢(とおや)」に着く。ここには釧路湿原内を走るJR釧網本線の「遠矢駅」があり、「釧路湿原ノロッコ号」という日本一遅い運行速度(40km/h)を誇る? 観光列車に乗ることもできる。それはともかく、ここから細い道を達古武(たっこぶ)湖沿いに展望台へと向かう。

 道の右側は湖岸を隠すようにして葦原や笹が繁り、左側には畑や草原が続いている。鳥の声が聞こえるように窓を開け、ラジオを消して走る。早速きれいな鳥の鳴声が窓から飛び込んできた。道の脇に車を止めて葦の穂先で囀っている鳥を見るとどうやらコヨシキリのようだ。道の反対側では木梢の葉陰に頭が黒く、身体の腹の部分が白い見慣れない鳥が止まっている。日陰になっているので姿がはっきり見えない。気ぜわしく飛び回る鳥の姿をようやくカメラに収めたのだか、上手く写ってくれたかどうか・・・。結果は下右端の写真となった。

コヨシキリ コヨシキリ ハジブトガラ

 30分程で撮影を切り上げ、「細岡展望台」へ行ってみた。パンフレットによると「釧路湿原の最大の景観を誇る大観望」のはずだったが、曇っているうえ、霧も出ていて眺望は良くない。元の道を国道まで戻って今日のお目当て「塘路(とうろ)湖」へと車を走らせる。まず「塘路ネーチャーセンター」へ寄ろうと、地図に示された場所まで行ってみたもののそれらしきところが無い。「塘路駅」の近くで聞いてもどこだか分らないようで、諦めて湖を散策することにした。

 [ 塘路ネーチャーセンター ]
  〒088-2264 北海道川上郡標茶町塘路駅前
  Tel:01548-7-3100 Fax:01548-7-3101
  E-mail:toro@dotoinfo.com
  URL:http://www.dotoinfo.com/naturecenter/

 塘路湖は、周囲18km、面積6.2ku、釧路湿原にある湖の中では最大の湖で、魚釣りの他、夏にはカヌーなどができ、冬には全面結氷した湖の氷の一部が盛り上がる「御神渡り」が見られるとのこと。
 ここでも探鳥はしてみたものの、遠く松の木の頂に止まった青サギらしき鳥を見かけただけで成果はなし。国道沿いのわずかな範囲ながら、歩いてみると色々変化があって、もう少しゆっくり散策してみたいと、後ろ髪を引かれる思いを抱きながら時間の制約もあって車に戻った。

  [ コッタロ湿原 ]
 再び車は391号線を走る。ものの5分も経たないうちに「コッタロ湿原」への入り口があった。「コッタロ」というのはどんな意味か調べてみようと、電子地図サイト「Mapion」で該当の場所をクリックしてみたら「北海道川上郡標茶(しべちゃ)町字コッタロ」と表示されており、どうやら地名であることがわかった。標茶という地名はアイヌ語の「シペッチャ」という発音がなまったもので、「大きな川のほとり」を意味している。

 道道「クチョロ原野塘路線」の砂利道をしばらく走り「コッタロ湿原展望台」に出た。展望台頂上までは高くなかったので登ってみると、運良く霧が薄くなってかなり遠くまで見通すことができた。

 眼下には釧路川が大きく蛇行しながら湿原を流れており、草原の中には数多くの池塘が点在している。ここから眺めている限りでは、遠くに山がなければどこまでが湿原なのかよくわからないぐらい、青々とした原野が果てしなく広がっている。
 吹く風はよし。その雄大さにしばし時を忘れて見入っていた。コッタロ湿原には、ここの他、第一、第二、第三展望台があるが眺望はここが一番よさそうだ。第一展望台の少し南で釧路川にコッタロ川が合流している。
 
 この辺りで見られる花も、やはりエゾカンゾウ、ヒオウギアヤメが多い。展望台の階段脇に目をやると、イワギクのような白い花(左)と藤色の花(右)がその存在を主張するかのように咲いていた。

 今来た道を戻り、国道391号線に出てからカーナビの目標地を阿寒湖にセット。道は塘路湖の北端を巻くようにしてやがて北へ折れる。2kmほど走ると大きな湖が見えた。「シラルトロ湖」だ。北海道の地名にはカタカナが多い。アイヌ語が語源と思われるが、後でシラルトロを調べたのだが語源は不明。周囲7.5km、面積1.7kuというから塘路湖の3分の1ぐらいの大きさになる。車から見る景色は塘路湖よりむしろこちらの方が変化があって美しいという印象を受けた。

 シラルトロ湖は海跡湖で、標茶町のホームページの案内では鳥類の楽園と紹介されている。冬には白鳥やオオワシが数多く見られるという。湖では「アオサギ」がまるで青緑色のスーツの上に白いマントをはおり、首にはマフラーという澄ました姿で船着場にじっと佇んでいた。

 湖岸を走っていると、道路前方にトコトコと歩いている動物がいた。よく見るとキタキツネ。車が通り過ぎさまにふとこちらを見たが、逃げるでもなくそのまま歩いていた。
 テレビなどではよく見かけることがあるが、実物を見るのは初めてで、なんとなく得をしたような気分になった。

 さて、ここからは今日の別な楽しみでもある阿寒国立公園の三つの湖、阿寒湖・摩周湖・屈斜路湖へと向かう。国道391号線を標茶で分かれて西へ曲がる。ここが標茶と札幌を結ぶ国道274号線の起点になる。全く信号の無い道を走るのは気持ちがいい。30kmばかり走って鶴居村辺りでナビの教えるまま右に折れてしばらくは快適な道が続いたが、数分経つと車がようやく1台通れようかというガタガタの細い砂利道。

 雨でぬかるんだ道をブルドーザーが走ったらしく、キャタピラの跡がそのまま固まって洗濯板のようにデコボコになっている。車が激しく揺れ、カーナビが今にも壊れそうな悲鳴を上げながら必死に耐えている。とんでもない道に入り込んだものだと思っがバックすらできない。そのうち、ひどいガスに包まれ視界も10mしか無い。この先どうなるんだろう、という不安が一瞬頭をよぎる。どうやら峠に向かう山道を走っているようでかなりキツイ登りが続く。

 30分ぐらい走ったらようやく舗装道路に出てとりあえず一安心。距離にして10km余りだったが、随分長い間走っていたような気がした。相変わらず霧は深い。道路の白線の長さは切れ目からだいたい5mというから、どれぐらいの視界か、写真を見るとおよその見当はつく。

 [ 阿寒湖 ]
 下り坂になってから、木の間隠れに湖が見えるようになった。阿寒湖が近い。峠を降りたら先程までの霧がまるでウソのように晴れ上がっていた。とはいうものの雲は多い。国道241号線に出ると観光バスが盛んに行き来している。高速道路のように整備された道を少し走ると、阿寒湖の温泉街に入った。

 阿寒湖は活火山の雄阿寒岳、雌阿寒岳、木禽岳に囲まれた周囲26km、面積12.93kuの静かな湖だ。阿寒湖・パンケトー(アイヌ語で「下の沼」)・ペンケトー(上の沼)・オンネトー(年老いた沼)の美しい湖沼があり、これらの湖は元々一つであったのが、雄阿寒岳の活動によって分かれてしまったようである。

 阿寒湖には、国の特別天然記念物のマリモが生息していることで有名だ。マリモの外観は一見するとひとつの個体のようであるが、沢山の糸状の緑藻が絡まって球体をなしているもので、れっきとした植物だ。大きいものでは30cmを超えるものもあるという。

 温泉街の道の両側には土産物屋が並び、木彫りの置物などが店内に所狭しと置かれている。店頭にはアイヌ装束に身を固め、顎には白い立派な髭を蓄えた、見るからに「アイヌ」という雰囲気の人が客を呼び込んでいる。車を湖畔の駐車場に停めて、しばし散策。ここへ来てホッとしたせいか、急に空腹を感じた。時計を見れば12時を少し回っている。土地の魚でも、と思ってそれらしき店を探したが「らしい」店がない。

 別の場所を探してみようと車に戻ったら、駐車場の目の前に釣船屋と食堂を兼ねたような店があった。中に入るとなんだかオッカナイ人相をした人が5,6人。よくよく見れば土地の漁師さんのようで、真っ黒に日焼けした顔がイカツク見えたのだった。近くで美味しい魚料理を食べさせてくれるところはないかと尋ねたら、この店で「ヒメマス」料理を出しているという。
 そこで、ヒメマスの刺身定食を注文したところ、ヒメマス一匹を丸ごと刺身にして盛った皿と、吸い物、ご飯、漬物が出てきて、お値段は確か千円だった記憶。リーズナブル、かつ、ハッピー。

[ヒメマス] サケ目サケ科
 阿寒湖に遡上したベニザケが陸封されたものといわれ、降海することなく一生を淡水域で過ごす。原産地は阿寒湖と網走川水系のチミケップ湖。
 [写真] http://www.daiwaseiko.co.jp/fishing/fish/rever/himemasu.html

 店のオヤジさんに景色の良さそうなところを聞いたら、スキー場が展望台になっていて見晴らしがいいという。車を15分ぐらい走らせるとスキー場に着いた。階段を展望台まで上がると、なるほど眺望はいい。この日は曇っていて雄阿寒岳を背景にできなかったのが残念だ。

 [ 阿寒ネーチャーセンター ]
  〒085-0464 北海道阿寒郡阿寒町阿寒湖温泉5-3-3
  Tel:0154-67-2801 Fax::0154-67-2801
  E-mail:nature@marimo.or.jp
  URL: http://www.akan.co.jp/index.htm

 [ 霧の摩周湖 ]
 阿寒湖を後に、国道241号線を東へ50km走ると国道243号線との交差点、弟子屈(てしかが)・・・アイヌ語で「テシカカ(梁(やな)の岸の上)」・・・に出る。その少し手前に屈斜路湖に源を発する釧路川が流れ、釧網本線「摩周駅」がある。線路脇の小さな畑地にいろいろな花が咲いていたのでカメラに収めた。

       

 摩周駅の東南方向に「900草原」という牧場がある。牧場面積1,440haの広大な町営牧場で、放牧草地の面積が930haあるのがその名の由来のようである。
 天気が良ければ摩周岳や硫黄山、藻琴山、遠くに雄阿寒岳・雌阿寒岳も見られるのだが、生憎、空はどんよりと曇っている。

 弟子屈交差点すぐ西の道道52号線に入り、10kmほど走ると摩周湖。湖は周囲を300〜400mの絶壁で囲まれ、湖面は海抜351m、周囲約20km、面積19.2ku、最深211.4mの世界一級の透明度を誇るカルデラ湖である。注ぎ込む川も流れ出る川もないのに水位は変わらないという。
 摩周湖はアイヌ語で「カムイト(神の湖)」、湖に接して聳える山「摩周岳(857m)」は「カムイヌプリ(神の山)」という。
 
 「摩周ブルー」と言われる美しい湖面を是非見たかったが、展望台から見た摩周湖は「霧の摩周湖」の異名通り、傍に近寄ってみてはじめてそれが木とわかるほどの深い霧に閉ざされていた。

 しばらく霧の様子を見ていたが一向に晴れる気配はなく、止む無く摩周湖と別れを告げ、道道52号線を下る。途中で「ノリウツギ」の白い花と、名前はわからないが木の葉の先に白・赤の模様がある木を撮った。これは北海道のいたる所で見かけ、同じように葉先が変色しているところをみると、病葉ではなくこういう種類の木なのかなとも思う。


 [ 硫黄山 ]

 摩周湖の坂を下りきり、釧網本線「川湯温泉駅」を右に折れるとすぐ左手に「硫黄山(512m)」(アイヌ語で「アトサヌプリ(裸の山)」)がある。この山は文字通り硫黄のため木が一本もない。

 所々に硫黄の噴出孔があり、凄まじい勢いで硫黄の噴煙を吐き出しながら、ツーンとするあの独特の硫黄の匂いを辺りに漂わせていた。小さな噴出孔では、湯たんぽに卵を入れ「温泉たまご」として売っている人がいた。

 道道52号線は川湯温泉を過ぎると屈斜路湖の東岸に沿って走る。約5分で今日の宿泊地「仁伏温泉」に着く。宿は民宿(湖畔の宿・にぶしの里)ながら、今回の旅行中、唯一の温泉宿である。
 宿の駐車場で荷物を車から出してたら、ポツポツと雨粒が落ちてきた。散歩には出れそうもないので早々と部屋に入って明日のコースを確認。











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