蛇 谷 ヶ 峰  

Vol.1

06年4月22日(土)
 当初は沢沿いの「カツラ谷」コースを登る予定であったが、土砂崩壊のため通行止めになっていたので止む無く林道コースをとった。道はよく整備されていて、階段が随所に設けられている。しかし、予想していたより遥かに急な登りで、"ハイキングより少し辛い程度かな" とタカをくくっていたのは大間違いだった。後で調べてみるとカツラ谷コースの方が断然花も多く、道も緩やかなようだった。

サイコクミツバツツジ


 いつものように朝6時に自宅を出発し、名神高速道路「木之本I.C」から国道8号線、161号線を経て高島市今津町で303号線へ入ったのが午前8時頃。何気なく道の右側を見ると「今津ザゼンソウ群落」の案内看板が立っており、現地まではそこから100m先と近い。駐車場も準備されており立ち寄ってみることにした。

 そこは雑木林に囲まれた小さな湿原で、ザゼンソウは確かにあったものの、時期遅れで既に大きな葉が出ていて、とても写真にならない。木道が敷かれていたので一回りしてから帰るつもりで歩き出すと、盛んに小鳥の鳴声が聞こえる。エナガ、シジュウカラの声に混じって綺麗な鳴声で囀っている鳥がいた。声のする方を良く見ると、なんと、キビタキがいた。早速デジスコを取りに車まで戻った。

シロハラ

まさかここでキビタキに出会えるなんて、ラッキー。


 思いがけずキビタキを見たので急遽予定を変更し、しばらく撮影することにした。オオルリだったら木の頂で囀り撮影も容易なのだが、キビタキは木の葉に隠れるように枝から枝へ飛び回り、なかなかベストポイントへは来てくれない。2時間ばかり撮影いるうちにどこかへ飛び去ったようで姿が見えなくなり、撮影を切り上げて本来の目的地へと向かった。

 国道303号線に別れを告げ367号線へ入ったとたん「崖崩れのため朽木・村井から先通行止」の看板。一瞬、"えぇ〜っ!" と思ったがどうやら目的地の先の地点と分り、ホッ!。「グリーンパーク想い出の森」を経て「朽木いきものふれあいの里センター」に着き、資料などを貰うために中へ入ると立派な展示施設があった。

 受付で記帳を済ませて案内嬢と話をしていたら" カツラ谷コースは土砂崩れのため通行できません"とのこと。別ルートを聞いたら林道沿いの道を教えてくれたがなんとなくイヤな予感がした。というのは、ガイドブックやインターネットによる花情報にはそのコースについて触れたものが見当たらなかったからで、結果的には予感が的中することとなった。

 登山路に入るとサイコクミツバツツジ(西国三葉躑躅)が両側に咲いている。ピンクがかった薄紫の花が山の春の到来を感じさせてくれる。少し歩くと「ヤマアオガエルの池」があり、ところどころにはミズバショウも咲いていた。

コブシ サイコクミツバツツジ ミズバショウ オオカメノキ

 花を見逃さないように、注意深く登山道の両脇を見ながら歩くのだが、一向にそれらしきものが見えず、スミレやショウジョウバカマがポツリと咲いている程度。"そのうち・・・" と、先の道に期待を繋いでとりあえず種類が異なると思われるスミレを片っ端から撮ってみた。

登山路に咲くスミレ。姿や色は様々。


 面白いもので、これまで見かけなかった花でも一度目にするとそれ以後は度々見かけるようになる。ショウジョウバカマもそうした花の一つで、つい最近お目にかかったと思ったら出かける先々で出会うようになった。ただ、写真を撮るとなるとこれが難物で、根元から花まで伸びるひょろりとした茎の処理が難しく、まことに構図がとりにくい。今回はどう撮ればいいのか、いろいろ拘って試してみたが、背景を工夫して変化をつける方法以外にいいアイデアが思い当たらなかった。

ショウジョウバカマ。撮り方をちょっと工夫してみた。 アセビ

 山路はどこまで登っても同じ状態が続き、目ぼしい花が見つからない。そうこうしているうちに、左膝に違和感を覚えるようになった。これは高校生時代に痛めた古傷で、疲労がたまると時々顔を出す。もう150mほどで頂上というところまで来たのだが、自分の他は誰も登山者はおらず、今ここで無理をするのは避けた方がいいと、思い切って下山することとした。

 このまま帰るのは癪だったので、沢の状況がどんな様子か確認しておこうと思い、降りる道を探していると丁度手ごろなところが見つかった。笹藪をかきわけて水辺まで行くとそこにはミヤマカタバミの群落があった。やっぱりガイドブック通り、花は沢筋の道に咲いているのだった。

ミヤマカタバミ。水辺を中心に群落を作っていた。

 さらに水辺近くまで降りると、岩陰の2箇所ばかりに黄色い花が見えた。どれも初めて見る花ばかり。図鑑を見た記憶の通りであればトウゴクサバノオとツルネコノメソウ。帰宅後に確認したら正解と分り、チョッピリ嬉しかった。

トウゴクサバノオ(東国鯖の尾)。名の由来は、花後に付いた実の形が鯖の尾に似ているから。

面白い形をしたツルネコノメソウ。 キブシ

 沢から登山道へ戻る途中、崖の上に赤い花を見つけた。形はナンバンギセルに似ているが、花の色はそれより艶やかで美しい。イワナシだった。確か五月頃に咲く花という記憶だったので、まさかここで見られるとは思ってもいなくて儲け物をしたような感じ。山肌は垂直に近く、ズルズルと滑る。木の根っこに掴まりながら靴で山肌に足場を作り、3mほど上にある花の位置まで登ってなんとか撮影できた。

イワナシ(岩梨)。果実の味が梨に似ていることが名の由来のよう。

アセビと蝶


 撮影を終えたときにはもう午後4時を回っていた。もう一度センターに寄って滋賀県の探鳥地を紹介した「探鳥地ガイドブック」を購入し、家路に向かった。

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