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Vol.1

6月12日(金) 名古屋 〜 R22 〜 一宮I.C 〜 (名神高速)〜 小牧JC 〜(中央自動車道) 〜 中津川I.C 〜 R19 〜 木祖村 〜 K26 〜 奈川渡ダム 〜 R158 〜 沢渡 〜 上高地(大正池〜徳沢)
6月13日(土) 上高地(徳沢〜バスセンター) 〜 沢渡 〜 R158 〜 前川渡 〜 K84 〜 乗鞍高原 〜 K84 〜 (上高地・乗鞍スーパー林道) 〜 市ノ瀬園地 〜 (上高地・乗鞍スーパー林道) 〜 奈川 〜 K26 〜 木祖村 〜 R19 〜 中津川I.C 〜 (中央自動車道) 〜 小牧JC 〜  (名神高速) 一宮I.C 〜 R22 〜 名古屋


09年6月12日(金)
 新緑の上高地に咲く野草を見てみたいと思って、急きょ出かけることにした。以前に購入した図書「中高年のための登山学・・・登山道で出会える花」(NHK出版)に上高地のことも紹介されており、その中で「ショウキラン、カモメラン」にも出会ったと書かれていたのを記憶していた。1998年発行の本だから、10年余り経った現在でもその花を見ることができるとは、まともに信じているわけではないが、それでもかすかな期待を抱いての山行きである。

 午前3時20分、自宅を出発。もちろん空は真っ暗。中央自動車道・中津川インター付近まで走ると、ようやく空が朝焼けで赤く染まり始めた。雲は多少あるものの天気は良さそう。中津川から木曽路に入り、野麦街道を経て奈川渡ダムに向かう。ダムサイトは昨年の秋、涸沢へ紅葉を見に行ったときの野営地で、そのときのことが思い出されて懐かしかった。今回も沢渡駐車場に車を置いての上高地入り。

 なお、今回は1泊2日の野草散策ではあるが、上高地と徳沢を往復しただけなので、ホームページ編集の都合上、散策コースで出会った花を日程に拘らず主な場所ごとに同一種類の花をまとめて掲載した。したがって、文章の内容と掲載の花とは必ずしも一致しない。

大正池から穂高連峰を望む


 シャトルバスへ乗ったのは5名ほどか。やはり真夏の登山シーズンや紅葉のときと比べるとズッと人出が少ない。大正池で下車していよいよ撮影開始。空は晴れ間も見えるがうっすらと雲がかかっている。梅雨時だからこれでもヨシとしなければならないだろう。とりあえず風景から、ということでお定まりの構図ではあるが前景に大正池を置いての穂高連峰。残念なことに、池の中にあった立ち枯れの樹木がほとんど見当たらず、あの幻想的な風景はもう過去のものとなってしまった。

 バス停から清流・梓川の岸辺に向かって降りて行くと、まず目に飛び込んできたのがエゾムラサキ。その傍にはラショウモンカズラ。それにズダヤクシュを加えた三種類の花は最盛期を迎え、上高地のどこを歩いていても目にすることができた。黄色の花はダイコンソウがほとんど。花だけを見ればミヤマダイコンソウと間違えそうなミヤマキンバイも随所に咲いていた。沢のほとりではオオバミゾホオズキが群生しているのをよく見かけた。

エゾムラサキ
ラショウモンカズラ ラショウモンカズラ ミヤマキンバイ ミヤマキンバイ

 上高地といえば穂高連峰と並んで有名な焼岳(2455m)を忘れるわけにはいかない。焼岳は、大正4年の大爆発で大正池を造った後も活動を続けており、現在も頂上から白い噴煙をたなびかせている。下の写真は大正池バス停付近から焼岳を眺めたものだが、トレードマークの立ち枯れの樹木がみすぼらしくなっていることが実感として理解できる。すぐ近くにある乗鞍・大黒岳(2772m)からは眼下に焼岳や、その傍に聳え立つ穂高連峰の雄姿、さらにその向こうには槍ヶ岳を遠望することができ、まさに絶景。

大正池から焼岳を望む


 ここで、今回歩いた上高地での散策コースと標準コースタイムを示しておこう。

6月12日 
 大正池 -- (0:20) -- 田代池 -- (0:45)途中で田代橋を渡り梓川右岸路へ出る-- 河童橋 -- (1:00) -- 明神池 -- (0:10)明神橋を渡り梓川左岸路へ出る -- 明神館 -- (1:00) -- 徳沢園
6月13日
 
徳沢園 -- (1:00) -- 明神館 -- (1:00) -- 河童橋 -- (0:10) -- 上高地バスセンター

 このコースはアップダウンもほとんど無く、いわばウオーキング気分で歩くことができる。今回は、往路に梓川右岸路、帰路に左岸路を中心に歩いた。どちらの路も心地よいが右岸路のほうが途中に木道があったりして散策路らしい雰囲気を味わえるだろう。

オオバミゾホオズキ
マイヅルソウ

 大正池から田代池まではそれほど珍しい花があるわけではなく、相変わらずダイコンソウ、ズダヤクシュが多い。驚いたのは林間に入ったとたんに、クルマバソウがグッと増え、しかも草丈が高く花付きも良いことだった。クルマムグラ、オククルマムグラ、クルマバソウの見分け方は難しい。花や茎の形、小さなトゲの有無などによって区別するのだが、拡大鏡でも持参していかないとキチッとした同定は難しいのかもしれない。
ズダヤクシュ ズダヤクシュ クルマバソウ オククルマムグラ?
ダイコンソウ

 上高地では小鳥の鳴き声をよく聴いた。その中でもキビタキの囀りは新緑の森に一層すがすがしさを感じさせていいものだ。また、水辺には決まってキセキレイの姿が見える。チョコマカ歩きまわるのでなかなか写真を撮るのには苦労する。キセキレイは木の枝で見かけるのは珍しいのだけれど、この日は運良く目の前の枝にとまってくれ、しかも、近づいても逃げななかった。レンズ交換をしているとシャッターチャンスを逸してしまうので90mmマクロのまま撮った。

田代池付近で見たキセキレイ


 田代池まで歩いたらようやくツマトリソウの群生を目にすることができた。この花の撮影では、日が照ると白飛びするし、日が陰ると花弁の微妙な姿がわからなくなってしまう。まことにカメラマン泣かせの花である。それでもあの小さくて可愛らしい花を見るとついついカメラを向けたくなってしまう。自分ではいろいろと手を変え品を変えて、なんとか綺麗に撮れないかとアングルなどを工夫してみたつもりだが、こうして並べてみるとどれも大して変わり映えがしないような気がする(笑)。

ツマトリソウ
ツマトリソウ

 大正池方面から来て左へ向かうと河童橋、右へは田代池という三差路がある。前方にはカラマツ林に囲まれた湿原が広がっていて、さらにその向こうには穂高連峰が屏風のように悠然と佇んでいる。ここはよく風景写真が撮られるところで、この日も三脚に大きなカメラをセットしたカメラマンが数人、熱心に撮影していた。ただ、狭い木道上での撮影となるので通行の支障になりやすく、また、当然のことながら人の通行によりカメラが揺れてしまうのでシャッターを切るときは人の気配に注意する必要がある。

田代池三差路から穂高連峰を望む ウエストン碑

 梓川に架かる田代橋を渡ってしばらく上流側へ行くと「ウエストン碑」がある。イギリスの宣教師であったウエストンは、日本各地の名峰を登山し、その記録を「日本アルプスの登山と探検」に著し広く世界に紹介した。上高地には彼の功績を顕彰してレリーフが飾られ、毎年6月には彼を偲ぶ「ウエストン祭」が開催される。今年はその第63回目に当たり、6月7日、ウェストン碑の前で夏山の安全を願って黙祷が捧げられたとのこと。余談だが、この日は「上高地音楽祭」が開催され、あの「青葉城恋唄」で知られる、さとう宗幸のコンサートがあるようだ。

ミヤマカラマツ ミヤマカラマツ シロバナノヘビイチゴ シロバナノヘビイチゴ
ゴゼンタチバナ ゴゼンタチバナ シロバナエンレイソウ ムラサキエンレイソウ

 河童橋近くの林間部まで来るとミヤマカラマツが目立つようになった。ゴゼンタチバナはまだ花をつけ始めたばかりで緑がかった色をしている。日当たりの良いところではシロバナノヘビイチゴも多い。ミツバオウレンにしては花が大きすぎるし、もう時期的には遅いのではないか、と思ってよく見ればこの花。エンレイソウ類ではシロバナエンレイソウが多いような気がした。中には綺麗な薄いピンク色をしたムラサキエンレイソウも散見された。ふと気が付くと、もうお昼。川岸に座って梓川の清流を眺めながらの昼食はことのほか美味しかった。

ウワミズザクラ ヒロハヘビノボラズ タカネグンナイフウロ ムカゴトラノオ
ハシリドコロ フッキソウ クルマバツクバネソウ ユリワサビ?

 河童橋周辺には山荘やホテル、土産物店などがいくつか建っている。一つの建物の横にヒロハヘビノボラズが咲いていた。枝からぶら下がって咲く様はツリバナに似ているが、こちらは房状になっており、全体的にふっくらとした感じ。タカネグンナイフウロは土産物店前の庭園のようなところに2株だけ咲いていたもの。たぶん植えたものだろう。このあたりまでは見慣れた花ばかり。ガイドブックによれば、ここから先の散策路が期待できそうなのだが・・・

タガソデソウ
ノビネチドリ

 梓川の川岸に沿って歩いていたら、白い花がやたらと目につくようになった。どこにでも見られるありふれた花のように見えるが、かといって今まで出会った記憶はない。たまたま河童橋のたもとで「花かおる 上高地」というガイドブックを買ったので調べてみたら「タガソデソウ・・・誰袖草(ナデシコ科)」という雅やかな名。古今集の「色よりも 香こそあわれと 思ほゆれ 誰袖ふれし 宿の梅もぞ」という歌に因んで名づけられたということのようであるが、私には特別良い匂いがするというわけではないように感じられたが・・・???
 

河童橋上流から穂高連峰を望む


 いよいよ今日の後半部分にさしかかった。路はなおも梓川に沿って続く。ときどき川から離れて山側をたどるがまた戻る。そうこうしているうちに、ノビネチドリが一輪だけ咲いているのを見つけた。先日、伊吹山で見たときより株が大きいように思う。何よりも、咲いている場所が開けたところなので写真が撮りやすかったのが嬉しい。なお、左の2枚と右2枚の写真は個体が異なり、別の場所で撮ったもの。今回、全コース中で確認できたノビネチドリは5株あった。

ツバメオモト
ツバメオモト

 明神橋を渡った後、明神館からは梓川左岸の道を遡る。右手の山の斜面にはところどころにツバメオモトが咲いている。もう終盤だとみえて、咲き終わった花も多い。この花は、葉と花の大きさが非常にアンバランスなのと、茎が長いので全体像を撮るのが非常に難しい。できるだけ背丈が短かくて花付きが良いものを選んで撮ったつもり。この頃にはすでに夕暮れが迫ってきており、かなり暗い中での撮影となった。

 今日の宿、「徳沢ロッジ」まではもう1時間足らずの距離。日が陰ると寒さを感じるようになったので、リュックからヤッケを取り出した。なんといっても標高1500mを超える山だから平地と比べるとかなり気温は低い。登山道脇に咲く花を撮りながら歩く。宿へ着いて時計を見たら、もうすぐ5時半。登山シーズンにはまだ早いせいか、宿泊客は自分を含めて4名。部屋の造りは全く山小屋と同じで2段ベッド。1室で6名用になっていた。夕食は今の自分にはちょうど適量で、ビールのつまみになりそうなものまであったので満足。


09年6月13日(土)
 目覚ましを5時にセットしておいたのだが、小鳥のさえずりで4時半ぐらいに起こされた。今更もう一度寝直してもしかたがないので朝の散歩に出かけた。徳沢は、以前は牧場があったところだそうで、開けた林が広がっている。数少ない樹木の下部には笹が繁茂しており、その中にオドリコソウの群落が点在している。ちょっとした草原には、愛知県・奥三河近辺でこのところお馴染みとなったクワガタが群生していた。この日に見ることができた野草は当然のことながら昨日とほぼ同じ。編集の都合で同種の花をまとめて掲載してあるのでこの日に初めて見たと思われるかもしれないが、そうではないことをお断りしておきたい。

ヤマクワガタ ヤマクワガタ コテングクワガタ コテングクワガタ
オドリコソウ オドリコソウ ベニバナイチヤクソウ ベニバナイチヤクソウ

 徳沢から明神館にかけての路で特筆すべきはベニバナイチヤクソウの多さだ。とにかく散策路脇に途切れることなく咲いていると言っても過言ではない。あまりに沢山あると、贅沢な話だがカメラを向ける気が薄くなってしまう。この日は朝から曇っていたので、あの鮮やかなピンクを写真にお見せできないのが残念。今にして思えばもう少し撮っておくのだった。

ヤマシャクヤク
ヤマシャクヤク

 今回の儲けものはなんといってもこのヤマシャクヤク。今年は伊吹山北尾根でわずかな花を見ただけで、その後、この花に会うため茶臼山へ2回も訪れたのに会えずじまい。時期的に6月も中旬を迎えていて、もう今年は諦めていただけに、まさかここで出会うとは思ってもみなかった。ラッキー!。緩やかな山の斜面には一筋の道ができており、その両側に少なくとも10株以上は咲いていたと思う。ここではもう少し陽の光がほしいところ。

ガスに霞む明神岳


 今日の明神岳は時々ガスに覆われ、頂上付近を見ることができない。時々風がガスを吹き流してくれるがすぐに隠れてしまう。そんな中で明神岳が美しく見えるポイントを見つけた。風景主体での撮影であれば、そこでじっとカメラチャンスを待っているだろうけど、今回は野草がメイン。後ろ髪を引かれる思いはするが先へ進む。登山道は下りとは感じないぐらいの緩やかな下り。今にも雨が落ちてきそうな天気になってきた。なんとかバスに乗るまでは持ちこたえてほしいと祈りつつ歩く。

コイワカガミ
サンカヨウ

 昨日はノビネチドリやツバメオモトなど林縁に咲く花を中心に探していたせいか、山の上の方にまではあまり目をやらなかった。今日は気分的なゆとりがあったのか、山の崖に咲いているコイワカガミを発見した。木の枝につかまりながら山肌をよじ登って撮影していたところ、他の登山客から注意を受けた。足場にはなんの花も咲いていないのに、と思いつつしぶしぶ降りたところ、腕に腕章をはめた監視員らしき人が近づいてきて、"あれぐらいは登ってもいいですよ。あの人たちはちょっと過剰反応し過ぎだと思います。"との言葉を得て、再度チャレンジ。でも、落ち着いて撮ることができなかった。

 サンカヨウも昨日はそれほど見かけなかったのに、今日になったら数箇所で見ることができた。新たに咲き始めたのか、昨日は気がつかなかっただけなのかは分からないけど、この花も"まさか"と思って期待もしていなかっただけに出会えたときは嬉しかった。サンカヨウの葉は随所で確認して、"これが一斉に咲いたら素晴らしいだろうな"と思いつつ眺めていたが、すでに咲き終わったのかこれから咲くところなのかがはっきりしない(笑)。

コミヤマカタバミ
 サナギイチゴ? ミヤマキケマン クリンユキフデ  シャク

 さて、2日間にわたった上高地での花散策もそろそろ終わりに近づいてきた。最後に掲載する写真は、花たちにはまことに申し訳ない言い方だが、コミヤマカタバミを除いて単品の寄せ集めのようになってしまった。上の写真「シャク」の左側は全く見当もつかない花でしたが、ネットの「尋ね花」サイトでクリンユキフデと教えていただきました。右側のセリ科の植物は後でよくよく調べたらシャクだと分かりました。どうもスミレ科、バラ科、セリ科の花には弱くて敬遠しがちとなり、これがさらに覚えるのを邪魔してしまう。

お別れ前に再び穂高を。


 湿原と唐松林の緑、穂高連峰、空の碧さと白い雲。何度見ても美しい景色だと思う。前日分で掲載の写真と似ているのは承知ながら、せっかく撮ったものなのでやはり載せておきたい。欲を言えば、ここに"水"があったら申し分ないと思う。上高地を去るにあたっての名残の一枚というところ。

 ニガイチゴ? ヤマガラシ ハクサンシャクナゲ  アマドコロ

 上高地バスセンターに着いたのは午後1時半ぐらい。昨日のことを思えば以外に短時間で歩いたことになる。もっとも、ほとんどは昨日見てきた花ばかりだからそうなるのも当然と言える。シャトルバスに乗って、今日撮ったばかりの写真をカメラの液晶画面で見ていたら、アッという間に沢渡駐車場に到着した。時刻は2時前後。帰宅には少し早いので帰り道は乗鞍高原から市ノ瀬園地を経由して奈川へ出ることにした。


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