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花の名山めぐり 〜 鳥海山登山 〜


7月23日(木) 晴れ

[ 行程 ]
鉾立山荘 ==> 賽ノ河原 ==> 御浜小屋・鳥海湖 ==> 八丁坂 ==> 御浜小屋・鳥海湖 ==> 賽ノ河原 ==> 鉾立山荘 K131.K210.R7 ==> 酒田みなとI.C 山形自動車道 ==> 鶴岡I.C R7.K47 ==> 羽黒手向
 (注) 道路番号の「R」は国道、「K」は県道。道路番号がないところは徒歩。
  [周辺地図]

[ 鳥海山・リターンマッチ ]
 早朝4時半ごろだっただろうか、他の登山客の廊下を行き来する音で目が覚めた。一般の宿と異なり、山小屋ではこんな時間に出発することも珍しくない。外は? と見れば、昨日と打って変わって見事に晴れ渡っている。本当は5時起床予定だったが、この天気を見たら寝ているのが惜しい気がしてそのまま起きてしまった。今日の予定は、できれば頂上まで行きたいけれど、時間の都合によっては途中で引き返すことになる。ここで、頂上までの標準コースタイムを示しておこう。

0:40→ 0:40→ 0:40→ 0:30→ 0:20→
鉾立 ・・・ 白糸の滝 ・・・ 賽ノ河原 ・・・ 御浜小屋 ・・・ 御田ヶ原分岐 ・・・ 七五三掛
←0:30 ←0:30 ←0:30 ←0:30 ←0:30

      1:30→   0:20→      
  千蛇谷コース ・・・ 御室 ・・・ 新山    
七五三掛   ←1:10   ←0:20      
  1:00→   0:10→   0:20→   0:20→
  外輪コース ・・・ 伏拝岳 ・・・ 行者岳 ・・・ 御室 ・・・ 新山
      ←0:50   ←0:10   ←0:20   ←0:20

 (注)七五三掛からは「千蛇谷コース」と「外輪コース」に分かれるが所要時間はどちらもほぼ同じ。

 
鳥海山・鳥海湖

 カラッと晴れ渡った明るい陽射しが草花に残った雨滴を輝かせている。なんといっても早朝の楽しみは、花や葉についた朝露、雨滴などが朝日を受けて虹色に輝く姿を見せてくれること。山の澄み切った空気の中で散策をしていると、梢を渡る風、草の香や鳥たちの声が朝の清々しさを一層引き立ててくれる。山を訪れるとこうした雰囲気を味わえるだけでも価値がある。山小屋を出発したのが5時半だというのに、後ろからポツポツと登山者がやってきては追い越して行く。

ノリウツギ ミヤマカラマツ ヤマハハコ クルマユリ
ミヤマホツツジ ツルアリドオシ ウラジロヨウラク ウラジロヨウラク

 行程表にある「白糸の滝」が鉾立山荘と賽ノ河原のほぼ中間点。登山道には山形県と秋田県の県境を示す標柱が建てられている。この辺りまではヤマハハコ、ヨツバヒヨドリ、ミヤマカラマツなどの見慣れた花が多い。昨日沢山咲いていたオトギリソウはまだ睡眠中らしく、花は閉じられたままになっている。シロバナハナニガナやハナニガナも同じくお休み中。ミヤマホツツジは咲きだしたばかりなのか、まだ花も小さく、蕾だけのものが多い。

ミヤマツボスミレ ミヤマツボスミレ ツマトリソウ ツマトリソウ
ヒナザクラ

 登山道は砕いた岩を敷いて造られており、その岩と岩の間にはたくさんのミヤマツボスミレが咲いている。賽ノ河原が近づくにつれて笹藪の中や岩陰にツマトリソウ、マイヅルソウ、ツルアリドオシが顔をのぞかせるようになった。どれも小さくて可愛い花だ。賽ノ河原までは昨日も来たこともあって、あまりカメラが活躍することもなく、比較的短時間で到着した。ところが登山道脇に湿地や雪田が現れて花の種類も増えてくると、進む速度がガタンと落ち、賽ノ河原の中心部まで来たときには完全にストップ。

賽ノ河原・チングルマ

 ここではヒナザクラ、チングルマ、イワイチョウ、ミツバオウレン、コイワカガミなど高山・亜高山帯で馴染みの花が多い。今回の旅行はできるだけ風景も取り込んだ写真を撮るよう心がけているので、レンズ交換をこまめに行うようにしている。花・岩・草原・雪渓・山の稜線、これをどう組み合わせるかによって使用するレンズも異なる。花だけのアップ写真はマクロレンズ、前景に大きく花を配置して風景を写し込むときは10-22mm超広角ズームなどと、自分なりに工夫して撮っているつもり。

イワイチョウ イワイチョウ ミツバオウレン ミツバオウレン
ベニバナイチゴ ベニバナイチゴ チングルマ チングルマ

 昨日のベニバナイチゴは霧に包まれてしっとりした感じだったが、今日は強い日差しを受けて花弁が輝いて見える。こういうコントラストの強い光を受けた被写体を撮るときは露出の設定に迷い、どうしても安全を見込んで条件をいろいろ変えては撮影するので勢い写す枚数が増えてしまう。写真を撮っているうちに大勢の登山者に追い越された。ここであまり時間を費やしてしまうと肝心な場所で時間がなくなってしまうのでそろそろ切り上げよう。

キバナノコマノツメ キバナノコマノツメ ウラジロヨウラク ミツバオウレン
チングルマ チングルマ ニッコウキスゲ ヤマハハコ

 賽ノ河原から御浜小屋までは、ニッコウキスゲ、コバイケイソウなどの草原性の野草が多い。ときにはハイマツの中に薄いクリーム色をしたハクサンシャクナゲが島を作るように咲いていた。よほど気に入った花でもないかぎり、何度か見慣れてしまうと得られる感激が薄くなってしまうのはやむを得ない。ニッコウキスゲもそんな花のうちに入るのだろうか。最初に霧ヶ峰高原で群生している姿を見たときは、思わす歓声を上げたものだったが、今では・・・。

鳥海湖・トウゲブキ

 御浜小屋の直下まで来ると急に花の種類が多くなった。ヨツバシオガマ、ミヤマキンバイなどが初めて顔を出したと思ったら岩陰にはダイモンジソウ。小屋を回り込んで展望の良いところへ出たら、そこはすでに鳥海湖を見下ろす尾根になっており、湖の岸辺へと続く斜面や七五三掛に至る尾根筋にはさまざまな花が咲き乱れていた。まさにお花畑。ここから先に鳥海山の固有種、チョウカイアザミ、チョウカイフスマが見られる。まずは紫色がかった暗褐色のチョウカイアザミがお目見え。

ダイモンジソウ ミヤマキンバイ トウゲブキ チョウカイアザミ
ヒナウスユキソウ

 東北の山ではトウゲブキをよく見かける。調べてみると本州中部以北とするものもあるが、やはり主に東北から北海道にかけて分布しているようだ。ヒナウスユキソウは別名をミネウスユキソウとも呼び、エーデルワイスの仲間。ところどころに群落を作って咲いている。御浜付近では特にヨツバシオガマが目立った。ウサギギクもよく見かけるのだが、花弁が欠けているものが多く、完全な姿をしたものは少ない。名前の由来は葉の形がウサギの耳に似ているから、というのだが・・・

ヨツバシオガマ ヨツバシオガマ ウサギギク トウゲブキ
チョウカイフスマ

 事前に得た情報では、チョウカイフスマは御浜小屋から八丁坂にかけての尾根筋に咲いているとのこと。御浜へ登る途中に知り合った方で、岡山から来られたご夫婦と一緒になって探したところ、登山道脇に咲いていた小さな白いがチョウカイフスマだと分かった。「フスマ」という名が示すとおり、小さな花であろうとは思っていたが、実際に見てみると本当に可愛らしい。風の強いところに咲く花だけあってしっかりと岩肌に根を張っていた。

鳥海山・新山(頂上)方面

 時計を見るともう12時。見晴らしの良い場所を見つけて岩に腰をかけ、昨日コンビニで仕入れたパンと果物で昼食。周囲の風景などを眺めながら時を過ごしていると、下の方からガスが湧きあがってきた。山の風景は午前中というのがセオリーのようで、どうしても午後には雲が多くなってしまう。タイミングを失しないよう、慌てて鳥海湖、新山方面の風景写真を撮りかけたがアッという間にガスが広がり、時々山頂を隠すようになった。

エゾシオガマ ハクサンシャジン タカネアオヤギソウ ハクサンシャクナゲ
ミヤマリンドウ ハクサンボウフウ? ホソバイワベンケイ ミネヤナギ

 さて、七五三掛から頂上にかけては岩礫地帯で、イワウメ、イワブクロ、イワギキョウ、ミヤマリンドウなどが咲きいっそう高山植物らしくなる。今日はそんな花を見るのが楽しみで来たのだけれど、ここから頂上直下の御室までは片道約2時間半。ところが時計はすでに1時近くなっており、今から下山しても今日の宿へ着くのは5時を回ってしまいそう。とてもこの先へ行くのは無理な相談だ。後ろ髪を引かれるような思いだが、また次の機会があることを期待して潔く下山することに決めた。帰路ではニガナたちもお目ざめだったのでカメラに収めた。

ネバリノギラン チングルマ ハナニガナ シロバナハナニガナ

 鉾立へ戻ったら3時になっていた。山荘の管理人さんにお礼を言ってから鳥海山を後にした。月山の麓・羽黒まではここから約2時間の道程。今日の宿は2年前にも泊まったことがある宿坊で、途中、車にガソリンを給油して宿へ到着したのが予定時刻の5時に5分遅れただけ。前回訪れたときは超満員の状態だったが、今回は私を含めて宿泊者は4名。部屋へ案内されたら20畳はあろうかと思う広さ。夕食時、"ネット予約の方にはビールかお酒をサービスさせていただきます" とのことで迷わずビールを注文。明日は6時出発予定なのでノンビリできる。さて、天気やいかに。


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