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花の名山めぐり 〜 雨の鳥海山 〜


7月22日(水) 雨後曇り

[ 行程 ] 
にかほ市・象潟 R7.K58.K131 ==> 鉾立山荘 ==> 賽ノ河原 ==> 鉾立山荘 
 (注) 道路番号の「R」は国道、「K」は県道。道路番号がないところは徒歩。
  [周辺地図]

[ 鳥海山のプロフィール ]
 やはり今回も山の紹介だけはしておこう。鳥海山(ちょうかいさん)は、山形県と秋田県に跨がる標高2,236mの活火山で、東北地方では尾瀬国立公園内にある燧ヶ岳(2,356m)に次いで2番目の高さを誇っている。その秀麗な山容から別名を出羽富士とも言われている。なお、秋田県側からは秋田富士とも言うようだ。鳥海山は「東鳥海」と「西鳥海」とから成り、それぞれに中央火口丘と外輪山がある。このうち、東鳥海の中央火口丘のひとつである「新山(2,236m)」が鳥海山の最高峰となっている。

 かつて、「ルート」の解を覚えるのに、「√5(ルート5)」は「富士山麓にオウム鳴く」と覚えた記憶があるが、鳥海山の標高が2,236m(フジサンロク)だから出羽の富士と呼んだという事実はない(笑)。「富士」の名は山の形状に由来することはいうまでもない。鳥海山の名称の由来は諸説あるが定説はないようである。鳥海山で知られるのは「影鳥海」。これは、早朝、東の空に雲が無い時に山頂から日本海側を見ると山頂のシルエットが浮かんで見えることから名付けられたもの。

ベニバナイチゴ

[ 憧れの鳥海へ ]
 午前5時。目覚ましの音が鳴る前に目が覚めた。窓のカーテンを開けて外を見ると、アチャー!。雨ではないか。確か、予報では「曇り」だったはず。昨日ホテルへ頼んでおいた朝食と昼食の弁当を受け取り、6時に宿を出発。雨脚はそれほど早くはないものの、それでもシトシトという感じよりは強い雨。登山口のある鉾立山荘までは鳥海ブルーラインを約23km、30分ほどの道程。10分ぐらい走るともうクネクネとした山道になった。

 道の高度が上がるにつれて雨は強さを増し、ガスまで出てきた。最初のうちは "まあ、山なんだから里と比べて多少雨が強いのは仕方ないな" と気楽に構えていたが、次第に風も強くなり、いわゆる時化(しけ)降り状態になるに及んで、"ムムッ! これはチトヤバイことになったか" と不安が頭をかすめる。そうこうしているうちに鉾立山荘に到着。時刻は6時半。広い駐車場には車が5,6台止まっており、車中にはそれぞれ人が居る気配。みんな雨が止むのを待っているのだろうか。

 時を追うに従って雨と風はさらに激しくなってきた。山荘で情報を得ようと中に入ると6,7人のパーティーが居り、どうやら登山を決行するか、下山して出直すかの相談をしているようだ。それぞれのメンバーから口に出る言葉はつい先日に発生した、北海道の大雪山系・トムラウシの遭難事故のこと。記憶が生々しいだけにみんな登山を決行することには慎重になっている。しばらくすると、撤退と決まったようで、車に戻っていった。

 さて、こちらはどうするか。なにはともあれ、しばらく天候の様子を見てみることにした。テレビを見ているとやはり午後には天気が回復しそうな予報がなされている。時々外の様子を見たりして待つこと約2時間。8時半ごろに心持雨が弱くなったような気がした。いつまでここに居ても仕方がないのでとにかく行けるところまでは行ってみようと、意を決して山荘を出た。登山道はよく整備されていて非常に歩きやすい。

イワガラミ ミヤマカラマツ ミヤマホツツジ ゴゼンタチバナ
ツルアリドオシ ツルアリドオシ オトギリソウ オトギリソウ

 歩き始めると次第に雨が弱くなり、小止みになった時はソレッとばかり写真撮影。カメラは念のためコンビニで食料を仕入れた時のポリ袋をかぶせ、レンズ部とファインダー部だけに穴をあけて簡易防水を施した。雨は強くなったり弱くなったりを繰り返しながらも一向に止む気配はない。山荘と「賽ノ河原」の中間ぐらいに山形県と秋田県の県境を示す標柱があり、そこを少し過ぎたらウラジロヨウラクの木が見え始めた。さらに先へ進むと今度は霧の中にベニバナイチゴの赤い花が咲いているのが見えた。

ウラジロヨウラク マルバシモツケ ツマトリソウ ツマトリソウ
ベニバナイチゴ

 登山道は緩やかな登りが続いているので、重いリュックを担いできた者にとってはありがたい。樹林帯に囲まれた尾根道のような登山道をしばらく行くと突然視界が開けた。どうやら賽ノ河原に差し掛かったらしい。この辺りでは右側の斜面から左にかけて沢が何本か流れており、イワイチョウ、ヒナザクラ、チングルマ、コイワカガミ、ミツバオウレンなど湿地や雪田の周辺に咲く植物も多く見られるようになった。しかし、残念ながら雨は間断なく降り続き、雨を防ぐ樹木もない状態では撮影は無理。

 賽ノ河原で写真を撮っていたら、急に風雨が強くなった。そこは吹きっさらしの状態なのでまともに風の影響を受ける。しばらく様子をみていたら上の方から数人のパーティーが通りがかったので頂上付近の状態を聞いてみたところ、七五三掛から上は台風並みの凄い風が吹き、外輪コースでは吹き飛ばされそうなほどの風で歩くのも大変なぐらいだという。また、千蛇谷コース(せんじゃだに)の雪渓は雨と風で登山道が消されてしまって分からなくなっており、登るにはかなり危険を伴うとのことだった。

 もう一組出会ったパーティーに聞いてもやはり結果はほぼ同じ。リュックの中には食料も用意していないので、万が一道に迷ったらそれで一巻の終わりになりかねない。また、単独行でもあるので身体に異常が発生しても助けを求めることすらできない。ここは明日の天気が晴れることを期待して、潔く撤退するのが賢明という結論に達した。時刻は11時を少し回ったところ。樹林帯に戻るまで昼食はお預け。

イワイチョウ イワイチョウ コバイケイソウ キバナノコマノツメ
ニッコウキスゲ マイヅルソウ コイワカガミ ヒナザクラ

 頂上の大物忌神社御室小屋には今日の宿泊を予約してあるのでなんとか連絡を取らなければならない。多分、鉾立山荘まで戻れば携帯電話も通じそうだからとにかく先を急ごう。この間も雨は間断なく降り続き衣類もかなり濡れてきた。山荘に着いたのは2時少し前。早速、御室小屋に電話を入れ、事情を話して宿泊をキャンセル。さて、次は今日の寝ぐらをどうするかを考えなくてはならない。昨日止まったホテルでも泊まれそうな感じはしたが、それではつまらない。山荘の管理人さんに宿泊が可能か尋ねたら "どうぞ" ということだったので結局お世話になることにした。

ミヤマアキノキリンソウ クルマユリ クガイソウ ウソ

 山荘は炊事道具の用意はあるが食事は提供されておらず、隣にある「国民保養センター稲倉山荘」では、5時までだったら夕食はなんとかなるとのこと。しかし、明日の朝と昼の弁当や水分補給のこともあるので、象潟にあるコンビニまで行って食材を仕入れてくることにした。往復1時間をかけて買い物をし、山荘まで戻ったときにはほぼ雨が止んでいた。天気予報の「午後には晴れ」というのは間違いではなかったが、「夜には晴れ間も」のほうが正しかっただろう。このままいけば明日こそ晴れてくれるだろう。


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