東北の山の花を訪ねて
花の名山めぐり 〜 月 山 〜
7月28日(土) 曇り後雨
[ 行程 ]
羽黒山 K211 ==> 月山8合目 ==> 弥陀ヶ原 ==> 仏生池小屋 ==>
行者返し ==> 月山神社 ==> 月山8合目 K211 ==> 羽黒山 K45.K47.R112 ==>
庄内あさひI.C 秋田自動車道 ==> 湯殿山I.C R112 ==> 月山I.C
秋田自動車道 ==> 山形蔵王I.C R286.K167.西蔵王高原ライン.K21 ==>
蔵王温泉
(注) 道路番号の「R」は国道、「K」は県道。道路番号がないところは徒歩。
[周辺地図]
[ 月山のプロフィール ]
花の名山、月山(1,984m)は、山形県のほぼ中央に位置し、なだらかな山容を持つアスピーテ(楯状)火山で、日本百名山のひとつに名を連ねている。また、月山は、湯殿山(1,500m)・羽黒山(418m)とともに出羽三山のひとつに数えられており、山岳信仰の山としても広くその名を知られている。それぞれの山頂には神社があり、これらを総称して出羽三山神社といい、現在も多くの修験者、信者が登拝している。
出羽三山の歴史は古く、今から約1,400年前、崇峻天皇の皇子・蜂子皇子(はちこのおうじ)により開山されたと伝えられている。月山には祭神として月読命(ツクヨミノミコトまたはツキヨミノミコト)が祀られており、これが山名の由来ともなった。月読命は暦日を読むこと、すなわち暦を数える神という意味から農耕と深く関わりのある神でもある。
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ハクサンイチゲ |
この旅行記を書いているとき、火坂雅志著の「臥竜の天」という小説を読んでいた。独眼竜正宗と言われた伊達政宗の生涯を描いた作品だ。その中に、彼の出生にまつわる話として湯殿山に関することが書かれていたので興味深く読んだ。政宗の母義姫(最上御前)は、「文武に通じ、心の強い男子」の誕生を願い、亀岡文殊堂の長海上人に湯殿山への祈祷を依頼したところ、夢枕に出てきた老人のお告げがあり男子を授かった。祈願の時に用いられた幣束を梵天というところから「梵天丸」と名づけらたというもの。
[ 弥陀ケ原へ ]
余談はさておき、本題に入ろう。宿坊のある羽黒山は出羽三山で最初に開かれたところで、麓の羽黒口には宿坊の数が40軒近くもある。朝起きてみると宿には客がほんのわずかしかいない。信者さんたちは麓から登って頂上でご来光を拝む人が多いので未明に宿を出発したのだろう。そのおかげでこちらも朝食にありつくことができた。
天気は曇り空。午後からは雨の予報が出されているが、下山までなんとかもってほしい。八合目までは登山道路があって車で楽に行くことができる。月山ビジターセンターのあるところが登山道の入口で、曲がりくねった道をどんどん登っていくと広い駐車場があった。車を止めると、周辺にはすでにいろいろな花が咲いていた。
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アゼムシロ |
タチギボウシ |
イワショウブ |
マイヅルソウ |
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ウラジロヨウラク |
ナワシロイチゴ |
タテヤマウツボグサ |
コメツツジ |
高原レストハウスの横を通り、中の宮まで来ると鳥居の傍に色とりどりの風車が並んでいる。どうして風車がここにあるのかよく分からない。鳥居をくぐると一周約2kmの弥陀ケ原遊歩道がある。木道の中は季節ともなればオゼコウホネ、ミツガシワ、トキソウなどの湿原植物が咲くというが今は姿を見かけない。弥陀ケ原には「いろは48沼」と呼ばれるたくさんの池塘が点在している。弥陀ケ原が別名「御田原」とも言われるのは、これらの池塘が一面の田んぼのように見えるからだという。
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中の宮の鳥居 |
弥陀ヶ原 |
木道を離れて月山への登山道に入る。最初の登りに付けられた名が「無量坂」。いかにも宗教と関わりがありそうな名だ。しばらく登って後ろを振り返ると弥陀ヶ原とそこに散在する池塘が一望のもとに見渡すことが出来る。登山道には適宜グリ石などが置いてあって歩き易い。この日は土曜日とあってか、登山客が多い。参拝に訪れる人は老若男女さまざまで、それぞれが白い装束に身を包み、手に金剛杖を携えて列をなして登っていく。この辺りでは道の両側に笹が茂っているせいか、花は思ったより少くない。
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ゴゼンタチバナ |
シロバナニガナ |
イワオトギリ |
ツマトリソウ |
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トキソウ |
イワカガミ |
ハクサンチドリ |
ヨツバシオガマ |
[ 仏生小屋のお花畑 ]
小一時間歩くと前方に小屋が見えた。九合目にある仏生小屋だ。これで半分登ったことになる。ここまで来るとさすがに花の数が増え、小屋の周りがお花畑のようになっている。傍には水神八大竜王や三十六童子の伝説が秘められた仏生池があり、クロサンショウウオが生息しているという。小屋の裏手に佇む山はいかにも月山の頂上を思わせるところから「オモワシ山」の名がある。
小屋を過ぎて間もなく、ハクサンイチゲの群落を見つけた。規模はそれほど大きくはないが、真っ白に輝く花は美しい。時季的には見られないかなと思っていただけに出会えた喜びは大きかった。その周りにはチングルマやミヤマリンドウ、タカネシオガマなども咲き、まさにお花畑。
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ハクサンイチゲ。純白で清楚な姿は何時見ても美しい。 |
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ウサギギク |
チングルマ |
ミヤマリンドウ |
タカネシオガマ |
登山道はさらに傾斜の角度を増し、岩場のようになった。ここが行者返しと言われる坂道。昔、山岳修験の開祖とされる役行者小角が山頂を目指したときに、足を滑らせた地とされ、蜂子皇子に仕える除魔童子と金剛童子が現れて、修行が未熟であるからと押し戻したところと伝えられている。大きな石にその足跡が印されているとのことだったが、どれだか分からない。
[ 頂上のお花畑 ]
この頃から小雨がポツポツと顔に当たりだした。頂上への道を急ぐ。潅木帯を抜けると山はなだらかな高原状となり次第に道の勾配も緩やかになってきた。道の両側にはコバイケイソウが大きな群落を作り、サボテンのような形をした独特の花が空に向って伸びている。
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コバイケイソウ |
月山周辺も国立公園に指定されていて、出羽三山から、南に連なる朝日連峰、飯豊連峰を経て、磐梯山、吾妻山、猪苗代湖に至る地域が「磐梯朝日国立公園」となっている。陸域面積としては大雪山国立公園、上信越高原国立公園に次いで我が国で3番目に大きな国立公園という。
頂上の月山神社に着くと、大勢の参拝客が列を作ってお参りの順番を待っていた。参拝するのは諦めて周辺に咲いている花を撮った。ここも仏生小屋付近に負けないぐらいの多彩な花を見ることができた。そうこうしているうちに、雨が本降りになってきた。風も強まり、急に肌寒くなってきた。残念ながら天気予報が当たってしまったようだ。早速リュックから雨具を取り出して着込む。雨宿りに利用できそうなところもないので座り心地のよさそうな岩を見つけて昼食。
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ミヤマキンポウゲ |
アオノツガザクラ |
ベニバナイチゴ |
ハクサンシャジン |
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エゾシオガマ |
ハクサンフウロ |
キバナノコマノツメ |
ハクサンハタザオ |
帰り道は雨と風で最悪の条件となった。こんな日に備えてカメラの雨カバーを用意してきたがそれでも撮影は困難で、早々にカメラをリュックにしまい込んだ。帰り道には風景写真を撮る心つもりでいたのだがこんな状態ではそれも無理。雨でぬかるんだ山道で足を滑らさないよう慎重に山を降りた。車まで戻ると、雨が少し小降りになり、麓へ着いたときにはもう止んでいた。
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ウスユキソウ |
コバイケイソウ |
チシマギキョウ |
ヤマガラシ |
[ 宮城蔵王へ ]
今日の泊まりは蔵王温泉。当初の計画では、月山に近い庄内空港か山形空港から名古屋へ戻る予定を立てていたところ、旅行社に聞くと今回のツアーコースでは両空港とも利用できないことが分かり、蔵王を経由して仙台空港から帰ることにしたもの。
月山から羽黒口まで戻り、庄内あさひインターから山形自動車道へ入った。途中、一部分未開通のころがあって、湯殿山インターで道が途切れている。月山花笠ライン、月山道路と名づけられた一般道を走り、月山インターから再び山形自動車道に戻る。ここから目的地の蔵王温泉までは66km。1時間もあれば宿に着けるかなと思っていたが、高速道路を降りてから道を間違えたらしく少し寄り道をしてしまい、宿に着いたのは5時少し前だった。
宿は料理が自慢で「るるぶ」などの旅行雑誌にも紹介されており、グルメ志向の若者の利用が多いと聞いていた。入口に入ったとき、他に客が居る様子がないので宿の主人に聞いてみると、泊り客はおらず全館貸切状態。蔵王はもともと樹氷やスキーで有名なところで、このホテルもゲレンデのすぐ近くに建てられており、冬になると賑わいをみせるのだろう。
夕食は評判どおり、手の込んだ料理が出された。食堂にはテレビもなく、ワインを飲みながらご主人と料理のこと、壁に飾られた山や花の写真の話などに花が咲き、ゆったりとした時間を過ごすことができた。明日はいよいよ旅行の最終日。天気がよければ「刈田峠」から「不忘山」へ行ってみたいが、どうも午前中は天気が優れないようだ。それはそのときのこと。天気と相談して行き先を決めよう。