初秋に咲く野草 --- 八方尾根 ---

旅   行   日   程    ( 2009年)
8月17日(月)
晴れ
名古屋 〜 R22 〜 一宮IC (名神高速道路)  〜 小牧JCT (中央自動車道) 〜 岡谷JCT (長野自動車道)  〜 豊科IC 〜R147・R148 〜 白馬 〜 八方尾根散策 〜 R148 〜 栂池高原(泊) 
8月18日(火)
晴れ
栂池高原 〜 栂池自然園散策 〜 R148・R147 〜 豊科IC (長野自動車道) 〜 岡谷IC 〜 R20・K254・K14 〜 岡谷市(泊)
8月19日(水)
晴れ時々曇
岡谷市 〜 K14・K254・R20 〜 東山 〜 高ボッチ 〜 高ボッチ山散策 〜 入山辺 〜 鉢伏山散策 〜 東山 〜 R20 〜 岡谷IC (長野自動車道) 〜 岡谷JCT (中央自動車道) 〜 諏訪南IC 〜 K90・R20 〜 富士見 〜 大河原湿原 〜 入笠湿原散策 〜 杖突峠 〜 R152 〜 伊那I.C (中央自動車道) 小牧JCT (名神高速道路) 一宮I.C 〜 R22 〜 名古屋
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 7月14日に関東・甲信地方が早々と梅雨明けし、それに遅れること2週間の8月3日に東海地方もようやく梅雨明けとなった。しかし、その後もグズついた日が続き、8月も半ばのお盆が終わる頃になってからようやく夏らしい天気になった。ところが暦の上ではもう秋。夏の花のピークはとっくに過ぎてしまっている。お盆最終の日曜日、7月の東北旅行からほぼ1カ月が経って、またぞろ山が恋しくなってきて信州の週間天気予報を見ていたら、ナント! 向こう一週間すべてに「ニコちゃんマーク」がついているではないか !。当然のごとくネットで宿を予約。山の道具はいつでも出かけれるように準備がしてあるので翌日に出発と決定。

[ 8月17日(月) ]
 この日はまるで子供が遠足に出かけるときのように、夜中に何度も目が覚めた。結局、午前3時前には床を離れ、前夜のうちに車を玄関先に出しておいたので3時15分には自宅を出発することができた。こんな早い時間なのに、高速道路に入ると思ったより車の数が多い。お盆の帰省客の残りが日曜日の渋滞を避けて、休み明けの始業時に間に合う時間を見計らって早朝に車を走らせているのかもしれない。

 長野自動車道・豊科I.Cからはもう「走り慣れた」と言ってもよいほど何度も通っている、一般道に入るとさすがに車は少なくなった。この調子では7時ごろには白馬まで行けそうな感じ。すっかり明けきった空には一点の雲もなく、まさに快晴そのもの。八方尾根のゴンドラ駅駐車場に着くと、すでに車が20台ほどが駐車していた。今日は天気予報のとおりよく晴れて暑さも厳しくなりそう。あまり日差しが強いようならば半袖用の「腕抜き(肘から下を覆うための筒袖のようなもの)」を着用しなければならない。

白馬三山。左から、白馬鑓・杓子岳・白馬岳


 山麓駅からゴンドラリフトで兎平まで登り、アルペンクワッドリフトに乗り継いで降りたところを黒菱平という。ここには小さな湿原があるので、いつも立ち寄るようにしている。花が減って淋しくなった湿原をシモツケソウが華やかさを盛り上げるようにして咲いていた。この時期になるとハクサンタイゲキはすでに実をつけており、ミヤマトリカブト、オヤマリンドウの紫色が目立つ。その足元では、イワショウブがアチコチで他の花の間から少しでも頭を出そうと背を伸ばしている。

シモツケソウ ミヤマトリカブト ハクサンタイゲキ オヤマリンドウ
イワショウブ イワショウブ エゾバシオガマ ミヤマアキノキリンソウ

 グラートクワッドリフトに乗って八方池山荘へ登ると右手に降りる道があり、少し登り返した丘のようなところに数人の人が立っていた。中には双眼鏡を手にした人もいるので、"何があるのかな"と思って行ってみると、そこは展望台になっており、白馬三山が悠然と佇んでいるのが見えた。これだけくっきりと山々を見渡すことができるのも珍しい。白馬岳と杓子岳の間に広がる白馬大雪渓は日本最大規模の雪渓で真夏には麓から稜線に至るまで登山者の列が続く。因みに白馬三山の主峰・白馬岳は標高2,932m 、次いで鑓ヶ岳 2,903m 、杓子岳 2,812m と続く。この3つの山を縦走することは望むべくもないが、たとえ白馬岳なりとも一度は登ってみたいところだ。

白馬三山 ミヤマダイモンジソウ イワシモツケ イワシモツケ
ウメバチソウ

 まず目についた花はミヤマダイモンジソウ。今回はいたるところで見ることができた。イワシモツケはもう終盤。なんといってもこの時期の山を飾るのはウメバチソウ。登山道脇のちょっとした草地をみればまず間違いなく生えている。だが、この日は天気が良すぎてウメバチソウを撮るには条件が良くない。白飛びしないようにするには露出の調整が非常に難しい。この花だけでもいろいろ場所を変えて何十枚と撮影したけれど、情けないかな「まとも」に撮れたのはごくわずか。

左から、不帰U峰・不帰T峰、天狗の大下り、天狗の頭・天狗尾根へ


 この日、意外だったのはのはハッポウタカネセンブリの多さ。リフトに乗っているときから下の方にあの小さな青色の花が沢山見え、山道を歩いていても "これでもか" というほど咲いていた。それに、思ったより背丈が大きいのには驚いた。一昨年に初めて見たときとは全く印象が異なる。これだけ花数が多いと "何時でも撮れる" と思ってついつい後回しになってしまう。ところが、他の花と同じように四六時中咲いているわけではなく、時間によって閉じてしまうからタイミングを失しないよう気をつけなければならない。

ハッポウタカネセンブリ
ミヤマコゴメグサ

 ハッポウタカネセンブリと同じく、ミヤマコゴメグサも物凄い数の花が登山道のいたるところに咲いていた。ミヤマコゴメグサは、イブキコゴメグサやタチコゴメグサと比べると花の形が大きく、また華麗な感じがする。下の写真のように、風景の一部としてこの花を取り込んで写してみても立派にそれと分かるほどの大きさ。最近は「風景の一部として花を配置しながらも、花が主役」という写真が撮れないかと考えていて、今回もいろいろ試行錯誤しながら山と花に取り組んでみた。

ミヤマコゴメグサ タカネマツムシソウ タカネマツムシソウ ミヤマウイキョウ
タムラソウ タカネイブキボウフウ ハクサンシャジン ハクサンシャジン

 この日のもう一つの目的は、せっかく好天に恵まれたので風景写真も「ちゃんと撮る」ことだった。花の写真を撮っていると、カメラにマクロレンズを付けっぱなしにしているため、良い風景に巡り合ってもレンズ交換が煩わしくてついつい風景写真を取り損ねてしまうことが多い。とにかく「意識して風景を撮る」と決めて、こまめなレンズワークに心がけた。それと同時に、PLフィルターも必ず使用するようにした。下の写真も、水面の色と光の反射との兼ね合いをどうすればよいか、それなりに考えて撮ったつもり。

八方池


 八方池では、池の周辺に雪が遅くまで残るためか、季節によって思いもかけない花が見られる。初夏のタカネバラも、"ここでこんな花に会えるとは"と、思わぬ出会いに感動を覚えることもある。この日のタテヤマリンドウもそうだった。もう花後の綿毛になったチングルマとイワイチョウが傍にあって"湿原を好みそうな花があるなぁ"となんとなく見入っていたら、そこに青くて小さな花。ミヤマリンドウより淡い色なのでそれと分かった。ミヤマイワニガナは初見の花。

ミヤマアズマギク ヤマホタルブクロ ハッポウウスユキソウ タムラソウ
タテヤマリンドウ ミヤマイワニガナ イワイチョウ イワイチョウ

 八方尾根には何度も来ているのに、これまで山の名前をしっかり覚えていなかった。今回は風景写真も沢山撮ったので珍しく山名を調べる必要に迫られた。下の4枚の写真について少し説明を加えてみよう。まず左から1枚目。白い登山道の先には八方池がある。左の緑が多い山を登って行くと唐松岳に至る。次に2枚目の写真。ギザギサとした山の間に4つの谷があり、最初の谷の右が不帰V峰、同じく次の台形をした峰が不帰U峰、次が不帰T峰。最後の谷の右側が天狗の大下り。3枚目は下の樺へ向う道から見た八方池。4枚目、一番高い山が五龍岳。その左の頂上付近が凹んでいるように見えるのが鹿島槍ヶ岳。

八方池への道 不帰峰(V→U→T) 八方池 鹿島槍ヶ岳→五龍岳
キンコウカ オヤマリンドウ シナノオトギリ ミヤマダイモンジソウ

 私のホームページの写真は、その日に撮った写真をベストアルバムとして並べたものではなく、自分にとっての記録と読者への情報提供を目的としている。したがって、目にした花はできるだけ多くの種類を撮影・掲載するよう心がけているつもり。しかし、どの山にでも見られるような花は "あ〜、あれか〜"とついつい写すのを省略してしまう。植物の分布や生態調査をしているわけではないのでこれは止むをえない。キンコウカ、シナノオトギリも、すんでのところで撮り漏らすところだったが思い直して撮ったもの。

八方池に映った山々


 一般の観光客が歩くのはせいぜい八方池まで。そこから先は登山者の領域となる。実は、旅程を決定する直前までは唐松岳へ登り、唐松山荘で一泊するつもりでいた。でも、登山道の状況などをいろいろ調べているうちに唐松岳への登山は諦め、「上の樺」かできれば「丸山ケルン」まで行って引き返すことにした。それでも、いつもより少し足を伸ばしたおかげで、イブキジャコウソウの大きな群落や初見のイワオウギに出会うことができた。その先の雪渓にはお花畑もあるという。いつかは唐松岳の頂上を極めてみたいものだ。

クモマミミナグサ ホソバツメクサ イブキジャコウソウ イブキジャコウソウ
ミヤマムラサキ ミヤマムラサキ ミヤマウイキョウ ミヤマウイキョウ

 ミヤマムラサキは昨年より多くの花が見れたとはいうものの、絶対数はそれほど多くはない。セリ科の花が苦手の私でも、ミヤマウイキョウは花全体のバランス良く、また、特徴のある形が写真に撮りやすいこともあってついついカメラが向いてしまう。シロバナクモマニガナは、シロバナハナニガナにも似ているが、この花を撮っていたときにちょうど花に詳しそうな三人連れが通りがかったので聞いてみたところ、やはりシロバナクモマニガナではないかということになり、この名を採用した。

ミヤマママコナ ハクサンシャジン ハクサンオミナエシ イワオウギ
シロハナクモマニガナ カライトソウ チャボゼキショウ ヨツバシオガマ

 上の樺を越えたところのトラバース道まで来たとき、時計は2時を少し回っていた。この先の丸山ケルンまではさらに1時間40分登らなければならない。帰り道の所要時間を考慮するとリフト運転最終時間に間に合わないのは確実なのでここから戻ることにした。そう決めたとたん、まだ昼食をとっていないことを思い出した。花の撮影ではよくこんなことがある。右手には雲がかかり始めた五龍岳、鹿島槍ヶ岳が間近に見える。"もうここからあそこまで縦走することはできないだろうなあ" などと考えつつ、おにぎりをほうばる。

八方尾根から白馬村を望む

 撮影しながらとはいうものの、早朝から一日中歩いていたのでさすがに足には疲れを感じ始める。八方尾根は、斜度自他は大したことがないので帰路も順調な歩みで下ることができた。帰路では、同じ道でも往路に気がつかなかった花に出会うこともあるので注意深く辺りを見回しながら歩いた。オヤマボクチはそんなときに見つけた花。ここでもまたミヤマウイキョウ。咲いている場所が面白かった。

キバナノカワラマツバ ニッコウキスゲ オヤマボクチ タカネマツムシソウ
タテヤマウツボグサ ミヤマウイキョウ ミヤマタンポポ クガイソウ

 リフト駅に着いたのは3時半ぐらい。予定した時間より30分ほど早く着いた。ここで冷たいジュースを買い求めてグイッ!。"オシイーイ"。さて、今日の宿は明日の目的地栂池高原のゴンドラ駅のすぐ近く。下山してからソフトクリームを食べて一服。もうここから宿まではゆっくり走っても15分ぐらいか。空には少し雲が出ているけれど明日の朝には消えていることだろう。



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