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6月18日(土) 曇り

[ 行程 ]
豊富温泉 D84・R40・D1118 ==> 兜沼公園 D1118・R40・R238・D121 ==> 稚内空港 ANA396
==> 中部国際空港
 (注) 道路番号の「R」は国道、「D」は道道

[ 兜沼公園 ]
 いよいよ今日で北海道ともお別れの日がやってきた。女満別空港へ降り立ってから1週間が過ぎたというのに、不思議と疲れていない。それに、昨年こちらへ来たときより時の経つのが短く感じられた。やはり好きなことに没頭しているときとはこんなものなのだろう。

 今朝はどんよりとした曇り空。鳥の撮影には最も苦労する天気だ。朝食はコンビニで仕入れたものを車の中で食べる予定をしていたので、昨夜のうちに宿の精算を済ませ、4時半に宿を出発。鳥の活動時間に合わせてスケジュールを決めるとどうしてもこうなってしまう。今日の立ち寄り先は兜沼ただ1箇所。レンタカーの返却時刻の午後1時までには8時間余りある。

緑したたるような白樺林

 兜沼は、サロベツ原野北端の湿原地帯にある周囲7Kmの小さな沼で、その姿が兜に似ていることから名付けられた。ここはかってオートキャンプのメッカとして賑わったが、近年、車両規制が行われるようになってからは客足が遠のいているという。しかし、野鳥たちにとってはそれが幸いしていて、その数も徐々に戻りつつあるということだ。

 ガイドブックやインターネットの観光案内によると、兜沼で見られる珍しい鳥として、アカエリカイツブリが紹介されているが、残念ながらここでも見ることができなかった。

 兜沼公園に到着して初めて目にした鳥はニュウナイスズメ。普通のスズメと非常によく似ているが、頭頂部から背中にかけての色が赤っぽく、スズメにある頬の黒い斑点模様がないのでそれと分る。また鳴声もスズメとは少し違う。

ニュウナイスズメ

 園内は遊歩道がよく整備されていて歩き易い。道の周りには白樺や広葉樹の林があり、林床の草地にはところどころにキク科と思われる背の低い花が群生している。綺麗な花だったので図鑑で調べたのだが結局名前が分らなかった。

兜沼 公園の林 ヤマハタザオ
草地に群生していた花

 花の写真を撮っていたら、聞きなれたアカゲラのクックッという声を耳にした。ここでアカゲラを見ようとは思ってもみなかったので嬉しい誤算。しばらくアカゲラと行動を共にして木々の間を歩き回った。

アカゲラ

 兜沼の周囲は葦原になっていて、こんなところにはオオジュリンが居そうだと思いつつ、沼の辺を散策していると、姿ははっきり見えないがコヨシキリのような鳥が先程の林の方向に飛んで行き、梢に止まって鳴き始めた。近くに寄ってみるとなんと、赤い色をしたベニマシコ。名古屋では冬にしか見ることができない鳥がここでは夏鳥なのだ。

ベニマシコ

 暫くベニマシコの写真を撮っていると、公園の入り口に近いところから、リズミカルなドラミング(啄木鳥類の鳥が木を嘴でつつく音)が森の中に響くように聴こえてきた。音の大きさからするとアカゲラやアオゲラより大きな鳥のようだ。北海道にはクマゲラという啄木鳥では日本最大の鳥がいる。もしや、という期待を込めて音のする方を隈なく探してみたがどうしても姿が見えない。

 そうこうしているうちに音が聴こえなくなってしまった。だが、暫くすると同じところでまたドラミング。必死になって探してもとうとう見つけることができなかった。その代わり、というわけではないが、低木の繁みから飛び立ち高い木の小枝に止まった鳥をみるとキビタキ。これも美しい鳥だ。この後、もう一度沼に寄ってみたが居たのはハクセキレイだけだった。

ハクセキレイ キビタキ

 兜沼を出たのは12時。稚内空港までは30kmそこそこだからゆっくり走ってもレンタカーの返却時刻には充分間に合う。車のフロントグリルには、埃に混じって小さな虫の残骸がこびりついて随分汚れてしまっている。

 去年と同じように、給油のついでに洗車をしてもったらさっぱりした。これはレンタカー会社に義務付けられているわけではないが、なんとなくドロドロになった姿のまま車を返すのは気分的によくないのでそうしているまでのこと。

 残り数時間で北海道ともしばらくお別れ。空港までの道々、雲がとぎれて晴れ間の広がってきた景色を時折眺め、名残を惜しみつつ車を走らせた。窓の外では豊かな緑を残した牧場や、牧草が刈り取られ、干草ロールとなった牧場が通り過ぎていった。

 宗谷湾のほぼ中間部に位置する稚内空港付近の国道238号線からは、左に野寒布岬、右に宗谷岬を遠望することができる。宗谷湾の野寒布(のしゃっぷ)岬も根室半島にある納沙布(のさっぷ)岬もその語源は同じで、アイヌ語の「ノツ・サム・・・岬のかたわら」からきている。

 さて、国道238号線を右に折れるともうそこは稚内空港がある。この付近も草原になっていて、ところどころに立っている潅木の頂にはコヨシキリがしきりに囀っている。道路脇には鮮やかなピンクの花がそこかしこに咲いている。この道を左折して空港の入り口を過ぎれば、4日前に立ち寄ったメグマ沼だが今日は空港へ。

 レンタカー会社で車の返納手続きを済ませ、走行距離を確認したら、「出発メーター:12,934km、帰着メーター:13,825km」となっていた。走行距離は891km。計画段階では564kmの予定だったから、約330km余分に走ったことになる。予定距離には利尻島・礼文島内での走行距離が含まれていなかったとしても、よく走ったものだ。

 送迎バスで空港に着き、とりあえず搭乗手続きだけを済ませてレストランに入った。窓際に座ってこれから乗り込む飛行機を見ながらの食事。北海道滞在中、昼食時に酒を飲むことはできなかったが、車の運転から開放されて今日はビール大ジョッキで乾杯。何事も無く帰途につけたという安堵感もあって、喉元を通り過ぎるビールの味はまた格別だった。

 中部国際空港行き、ANA396便は定刻通り空港を飛び立った。所要時間は2時間10分。天気はすでに回復し、青空が広がっている。機内では、土産に買い求めた本を読みながら時を過ごした。16時20分、飛行機は無事中部国際空港に到着。名古屋への帰路も「名鉄空港特急ミュースカイ」。名古屋駅へ着いたとたん、いつもながらの蒸し暑さの中に投げ出された。北海道の涼しさが懐かしい。

 土産物で重みを増したリュックを背負いながら歩いて帰る気にもなれず、考えることなくタクシー乗り場へ一直線。自宅へ着いたときは6時を回っていた。この旅行で撮影した写真の枚数は1,300枚を超える。これからがまた一仕事。とは言いながら、それも楽しみのうちか。
 

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