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道北の原生花園と島 〜〜 利尻富士の島 〜〜


6月15日(水) 晴れ

[ 行程 ]
鴛泊(利尻島) D108 ==> オタトマリ沼 D108 ==> 利尻町森林公園 D108 ==> 仙法志御崎公園 
D105 ==> 富士野園地 D105 ==> 沓形 (フェリー) ==> 礼文島(香深) 
 (注) 道路番号の「R」は国道、「D」は道道

[ オタトマリ沼 ]
 前日の夜、宿の人に"明日は早朝に出かけるので朝食は外で食べますが精算はどうしましょうか"と言ったら、"島を出る前でいいですよ"との答えだったのでお言葉に甘えることとした。いつものとおり午前4時キッカリに起床して窓の外を見ると濃霧。幸い雨は降っていないようだ。荷物を車に積んで4時半、第一の目的地オタドマリ沼に向かって宿を出た。

 利尻島は道道108号線(40km)、105号線(13km)が海岸線を走っていて、環状道路のようになっている。海岸道へ出ると、太陽はもう地平線から顔を出しているはずなのに霧のためまだ薄暗い。小さな漁港の辺りにさしかかったら霧の中から太陽がボンヤリ浮かび上がってきた。

 空と海とが混然と溶け合った風景の中に、海岸端では1艘の小舟が漁に出る準備をしており、ちょっと幻想的な雰囲気だった。

 オタトマリ沼までは約20km。快適な海岸道路「道道108号線」を走っていると、時折、霧の晴れ間から利尻山(1,721m)が姿を現す。海から突き出たようなこの山は「利尻富士」の名のとおり富士山を想わせるような優美な姿をしており、アイヌの人がリィシリ(高い山の島)と呼んだのも"なるほど"とうなづける。朝の冷気の中で直接目にした利尻のこの風景を、写真の限られた空間の中に空気感とともに伝えるのは難しい。

     

夜明けの利尻富士3景


 ときどき車を止めて利尻山の写真を撮りながら30分程走っただろうか、オタトマリ沼入口の看板があった。オタトマリ沼は、爆裂火口の底が泥炭地となってできた沼で、周囲1.3km。ゆっくり歩いても30分もあれば充分。

 沼に着いたばかりの時はまだ霧が深く(写真左)、沼には朝霧が立ち込めていた。時間の経過とともに少しずつ霧も晴れ、利尻富士の姿が鏡のように穏やかな沼の水面に映って美しかった。

 オタトマリ沼周辺には沼浦湿原、三日月沼、南浜湿原といった、火口跡に溜まった泥炭によって出来た湿地がある。また、沼の辺にはキャンプ場などもあって、7月に入ると大勢の若者で賑わうところでもある。今回は時期も早く、そうした喧騒は避けられそうだ。

朝霧が立ち込めるオタトマリ沼と利尻富士


 利尻島は、鳥の島としても有名で、島の野鳥リストによれば277種もの鳥が確認されているという。もっとも、これは現在までに確認された数ということで、常にそれだけの鳥がいるというわけでもない。とは言え、島の面積(182ku)からすればかなり多いと言えるだろう。

 沼の周囲を一回りしてみて、いろいろな鳥の声は耳にするのだが、なかなかその姿を捉えることができない。2時間近く探鳥していてかろうじて撮影できたのが、ヒガラ、ノゴマ、アオサギ、ウミネコ。なかなか思うようにはいかないものだ。

ヒガラ ノゴマ アオサギ ウミネコ

 園内を掃除していた人に最近の様子を聞いてみると、"昔は鳥も沢山いたけど、最近めっきり少なくなってね。観光客が増えたせいかねぇ。"。やっぱりどこでも同じように鳥が少なくなっているようだ。私が名古屋から来たと言うと、気の毒そうに"ホラ、そこの木の幹に穴が開いてるところ、あそこはアカゲラの巣があってね、夕方には戻ってくるよ"と教えてくれたのだが、残念ながらその時間まで居ることができない。

[ 利尻町森林公園 ]
 7時半を少し過ぎた頃、ここでの撮影を切り上げて次に訪れたのが「利尻町森林公園」。礼文島へ行くフェリー港「沓形」の山側に広がる自然の森を残した公園である。園内には遊歩道が縦横に作られており、遊歩道によって区切られたブロックごとに、春の森、夏の森、花の森、憩いの森、緑の森、小鳥の森などの名が付けられていて、変化に富んだ散策を楽しむことができる。

 ここでも探鳥が主な目的で、森の中をアチコチ歩いてみても鳥の種類は多くなかった。コマドリの声はどこに居ても聴くことができるのだが、どんなに目を凝らしてみてもやはり姿は見えない。正に幻の鳥だ。

ウグイス

アカゲラ

アオジ


 森の中に咲いているのは白い花が多い。「花の森」ゾーンではレンゲツツジが満開で、辺りの緑を圧倒していたのが印象的だった。ここでの花もこれまでと同じようにそれほど珍しいものはなかった。後でわかったことなのだが、利尻島で花を見ようとしたら、利尻山の7,8合目に広がるお花畑まで行かないと美しい高山植物には出会えないようで、機会があったら是非訪れてみたいものだ。

  レンゲツツジ ミヤマクワガタ ハイマツ マイヅルソウ

葉に落ちた八重桜 ツルキケマン

ハシドイ 

クルマバソウ   ホタルカズラ シロツメグサ

[ 仙法志御崎公園 ]
 道道108号線を更に南へ向かうと島の南端に「仙法志御崎公園」がある。仙法志岬周辺は仙法志ポン山から流出した溶岩流が海岸にまで達して、黒褐色の奇岩が荒磯の景観を作っている。この公園には自然のままの磯を利用して作った水族館もある。

 磯へ降りると、透き通った海の中に小魚が泳いでいるのが見える。磯の一部分を仕切って造られた水槽にはトドが2頭悠々と身体をくねらせながら泳ぎ、人が通りがかると水面から口を出してエサをねだるように寄ってくる。

利尻山 磯への入口の岩 岬の磯

[ 富士野園地 ]
 時計を見ると既に11時近くになっている。宿の精算がまだ済んでいなかったことを思い出し、とりあえず宿に引き返すこととした。沓形から道道105号線を経て鴛泊へ向かう。これで丁度、島を一周することになる。途中で登山客と何人か行き合った。

 そういえば、同宿した同年輩の男性3人連れも今日、山へ登ると言っていた。一日の山登りのために同じ民宿に連泊して、万が一雨が降ってもいいようにと、3日間滞在するとのことだった。このパーティーのように、旅を楽しむゆとりを持った日程を組むのが理想ではあるけれど、遥々北海道まで来て、となるとどうしても欲張ってしまうのは致し方ないのかも。

 宿での精算を済ませてから、島の北端にある「富士野園地」へ行ってみることとした。ここは断崖絶壁になっていて大変眺望がいい。園内にはエゾカンゾウが群生していて橙色を帯びた黄色の花がアチコチに見られた。崖の下にある小さな島は海鳥のコロニーになっていて、ウミネコなどが飛び交っている。

 ここで見た陸鳥は、コヨシキリ、ホオジロぐらい。いずれも距離が遠くて撮影はできず。崖の上にあるトイレの近くには、人が食べ残した物をあさるカラスが何羽もいて、ゴミ箱に近づくとトイレの庇に止まってこちらの様子を伺っている。あまり気持ちの良いものではなかった。

海鳥のコロニー 飛び交うウミネコ

美しい海 エゾカンゾウ カラス

 さて、礼文島(アイヌ語:礼文 レプン・シリ---沖にある島---)行きフェリーの出港時刻、午後3時20分までに残された時間が1時間余りとなった。沓形まではせいせい車で15分。利尻島での余韻を楽しみながらゆっくり車を走らせる。僅か一日の滞在であったが、好天にも恵まれて利尻島の風景を存分に楽しむことができた。

 フェリーターミナルで昨日と同じように乗船手続きを済ませ、船に乗り込む。ここから礼文島までは40分。今日は船室には入らず、2階にあるラウンジで缶コーヒーを片手に、礼文島のガイドブックを読みながら時を過ごそう。

 礼文島・香深(かふか)に着いたのは午後4時。まだ宿に入る時間までにはかなりの時間があるので、明日の最初の訪問地「久種湖」の下見を兼ねて散策に出かけた。礼文島の道は利尻島と比べるとかなり狭い。島の様子も東側と西側では地形的に大きく異なっており、西側には崖地が多く、車が走れる道もほとんどない。

 香深は、ほぼ島の南端、久種湖は北端に近いところにある。といっても、南北22km、東西6kmの小さな島だから車で走れば所要時間はわずかである。久種湖はこれといって特徴のある湖ではないが、日本最北の湖という点では何がしかの想いが湧いてくる。湖の西側は湿地帯になっていて、春にはミズバショウやリュウキンカ、ザゼンソウなどの湿原性植物を見ることができる。

 しばらく散策の後、夕食の時刻も迫ってきたので宿へ向かうこととした。海岸道路から先程渡ってきた海の向こうを見ると、山の頂に雲の帽子を被って聳えている利尻山が見えた。海越しに見る利尻富士もなかなか情緒があっていい。宿の駐車場に車を入れてから近くを散歩していたら、夕闇に向かって刻々と色を変える空がとても美しかった。

薄暮の利尻島

夕暮れの利尻島 夕闇近い利尻島

 私が泊まった民宿は、所在地が礼文町知床といい、礼文島最南端に位置している。インターネットで宿を予約しようとしたときに、宿の所在地が知床と書いてあったので、一瞬、知床半島の知床と間違えたのかなと思った。再度、調べ直してもやはり礼文島の知床に違い無く、ようやくそれが同じ地名だということがわかった。

 宿の客は15名程度。ここでも同年輩の人が多かった。利尻島が山の島・鳥の島と称されるのに対して、礼文島は花の島と言われるだけあって、高山植物を見に来ている人がほとんど。夕食時には、それぞれの客が宿の人にビュースポット、花の群生地などの情報を教えてもらっていた。私もレブンウスユキソウ、レブンアツモリソウの群生地の所在を書いた地図を見ながら説明を受けた。

 北海道へ来てから花にはそれほど恵まれていなかったが、説明を聞いた限りでは明日は大いに期待が持てそうだ。天気予報によると明日も好天が続くという。今回の旅行で定番となった中瓶ビール2本の晩酌を飲んだらいい気分になってきた。ゆっくり湯船に浸かって午後9時就寝。

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