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道北の原生花園と島 〜〜 再びサロマ湖へ 〜〜


6月12日(日) 晴れ後雨

[ 行程 ]
中部国際空港 ANA327 ==> 女満別空港 R39 ==> 網走 R238 ==> 能取湖 ==> サロマ湖
 (注) 道路番号の「R」は国道、「D」は道道

[ 中部国際空港 ]
 今年は愛知万博「愛・地球博」が3月25日から9月25日まで愛知県の愛知郡長久手町、瀬戸市の両会場で開催される。このビッグイベントに先立って、2月17日には"元気な名古屋"を象徴するかのような中部国際空港(セントレア・・・Centrair)も開港し、連日旅行客や見学者で賑わいをみせている。新聞、テレビでは連日のように中部国際空港の模様が報道されていたが、まだ一度も行ったことがなかったので北海道旅行を機会に空港内を見学することとした。

 空港へは名古屋駅からの直行便「名鉄空港特急ミュースカイ」が運行されている。ミュースカイは中部国際空港の開港に合わせて製作された車両で、1月29日に一番列車がお目見えした。空港ターミナルビル内に設けられた中部国際空港駅までの所要時間はわずか28分。

 出発が日曜日とあって当日は混雑も予想されたので前日に乗車券を買い求めることとし、空港内の見学時間を1時間半と見込んで、午前11時32分発の列車を予約した。出発の日、去年と同じように、背にはリュック、肩にはカメラバッグに三脚といういでたちで午前11時に家を出る。晴れ渡った空が気持ちがいい。6月半ばというだけあって、歩いていると少し汗ばんでくる。

 「ミュースカイ」に乗るのはもちろん初めてで、どんな電車か興味深々といったところ。名鉄名古屋駅のホームでしばらく待つと、青と白を基調に広がる空と深い海をイメージしてデザインしたという、美しい電車が滑るようにしてホームに止まった。"ふむ、これがミュースカイか。名鉄さん、なかなかやるじゃん"というのが率直な感想。

ミュースカイ 車体のシンボルマーク 車内のディスプレー

 車内の座席は通路を挟んで2人掛けが2列でゆったりとしている。座席シートのマリンブルーが清々しい感じ。各車両には荷物置き場が2箇所配置され、大きな手荷物を持つ旅行客には嬉しい配慮がなされている。客室には22インチのディスプレイに文字情報や画像情報などの提供のほか、リアルタイムに走行時の前方風景を映し出すしくみとなっている。

 車内で北海道のガイドブックを見ていたら乗車時間の28分はアッという間に過ぎ、列車は中部国際空港駅に到着した。ホームのある3階のアクセスプラザから旅客ターミナルビルを結ぶ「動く歩道」が一直線に延びており、降りたところには各航空会社のチェックカウンターが左右に広がっている。空港に入っての第一印象は"想像していたより遥かに広いなあ"というものだった。

動く歩道 チェックカウンター

中部国際空港・旅客ターミナルビルと管制塔


 中部国際空港は、伊勢湾東部(常滑沖)の24時間利用可能な海上空港として計画され、平成12年8月にまず護岸工事に着手、平成17年1月の完成まで約4年半の歳月をかけて建設された。空港面積約470ha(名古屋ドーム約100個分)の敷地に3,500m滑走路が1本(将来は4,000m滑走路2本に拡張予定)とターミナルビルなどの空港施設が配置されている。

 余談だが、空港の建設に際しては、空港会社の主力であるトヨタ自動車がその持ち味をフルに発揮して、当初予定7,680億円だった建設費を1,200億円以上も節約したと言われ、さすが1兆円を稼ぎ出す世界に冠たるトヨタだと大いに評判となった。

 さて、それはともかく、空港内の施設をご案内しよう。建物は4階建てで、1階にはギャラリー、情報コーナー。2階には到着ロビーとビアガーデンがある。3階が電車のホームと展望レストラン。階段を上がって4階に行くと中央にイベントプラザ、その左側には有名店などが30店舗並ぶ「レンガ通り」、右側はがらっと雰囲気を変えて、店先にちょうちんを掲げた「ちょうちん横丁」があり、グルメの店が31店舗入っている。

レンガ通り レンガ通り レンガ通り ちょうちん横丁

 ちょうちん横丁の一角には、発着する飛行機を眺めながらお湯につかることができる展望風呂「宮の湯」があって、見学客にも多く利用され盛況だという。これ以外にも、サウナ、ジャグジー、寝湯風呂、水風呂などがあっていろいろ楽しめそうだが、またの機会とすることとしよう。

 イベントプラザから外へ出ると「スカイデッキ」が設けられ、飛行機を眺める人が鈴なりになっている。
 見学客がこのようなかたちで飛行機を見ることができる施設は少ないのだそうだ。それに応えるかのように滑走路には沢山の飛行機が駐機していた。

[ サロマ湖へ ]
 出発予定時刻の20分前になったので見学をきりあげて出発ロビーへと移動する。女満別行きのゲートはロビーの端近くにある。このフロアーにも「動く歩道」はあったが、歩いて行くこととした。ゲートに向かう途中、滑走路が混雑していて女満別行き飛行機の到着が遅れていることを告げる場内アナウンスが流れた。


 出発予定時刻の2時になって飛行機への搭乗が始まった。飛行機は全日空ANA327便。滑走路では車が行き交い、出発準備を急いでいる。指定された座席は主翼の近くではあったが幸い窓際。飛行機は15分遅れて発進した。いよいよ北海道への旅が始まる。

 飛び立ってしばらくは手にした本などを読んでいたが、ふと眼下を見下ろすと数条の大きな川が目に飛び込んできた。よく見ると、どうやらいつも水鳥撮影のフィールドとしている木曾三川公園の上空だった。急いでポケットからデジカメを取り出して撮影。少しタイミングが遅れたが、画像を確認したら O・K。

 「木曾三川公園」付近上空

 木曾三川の河川名


 この木曾三川には悲劇の物語があるのでご紹介しよう。木曾・長良・揖斐という三つの川は、江戸時代以前には大小の河川が網目のようにつながっていて、下流地域の濃尾平野では古くから度々水害に悩まされてきた。とくに、宝暦3年(1753年)8月中旬の三河川の氾濫による洪水は数十年このかた見られなかった大水害をこの地域にもたらした。

 江戸幕府はこれを機に同年12月、三つの河川を完全に分離する治水工事を薩摩藩に命じた。これが薩摩義士の偉業として今も語り継がれている「宝暦治水」である。

 薩摩藩の工事の総奉行となった家老の平田靭負(ひらた ゆきえ)は、度重なる事故や幕府役人の陰湿な妨害工作にも必死で耐え続け、この難工事を1年2か月かかって完成させた。しかし、この工事による薩摩藩の支出は莫大な金額にのぼり藩の財政をも揺るがすこととなった。

 また、工事に伴って亡くなった藩士80名のうち、幕府役人との軋轢による自殺者は50名を超えるほど過酷なものであった。平田は工事の完成を見届けた後、これらの責任を取って切腹して果てた。

 現在の木曾三川公園の南にある治水神社は、その平田靭負を祭神として昭和13年に建てられたものである。治水神社から長良川と揖斐川を隔てて南に伸びる堤防には、治水工事の完成を記念して幕府の命により薩摩から取り寄せた日向松が千本植えられ、今も「千本松原」としてその名を留めている。鹿児島県と岐阜県はこうしたことが縁で今でも交流があるという。

展望タワーの南に
ある治水神社

手前が長良川
向側が木曽川

左:長良川、右:揖斐川。真中が千本松原

木曾三川公園
の展望タワー


 話が横道にそれてしまった。北海道の旅に戻ろう。飛行機は途中大して揺れることもなく順調に飛んでいる。着陸態勢に入って高度が徐々に下がってきたら窓に雨滴が見えるようになった。どうやら外は雨。天気予報どうりになってしまった。隣の席の人が翼が見たいと言うので一緒に見てみたら、着陸寸前の主翼が目に入った。

 女満別空港到着は16時10分。やはり予定より15分の遅れ。到着ロビーで荷物を受け取り、レンタカー会社の窓口へ行ったら誰も居ない。隣の窓口の案内嬢に聞くと"もうすぐ来ると思いますが・・・"と頼りない返事。5分ほど待ったら"すみませ〜ん"と言って係員が現れた。営業所で車の借受手続きを済ませ車に乗って時計を見たら既に4時半を回っていた。

 そうそう、今回の旅行記を書くに際しては、北海道の地名でアイヌ語を語源とするところはできるだけその由来(アイヌ語の意味)を書こうと思い、インターネットでいろいろ調べた。まず手始めに「女満別」から。女満別はアイヌ語で「メム・アン・ペツ」湧き壺(泉)のある川という意味。

 カーナビを今日の宿泊先、サロマ湖畔(アイヌ語:サロマ--サロマペツ--葦原にある川)のホテルにセットしていよいよ出発。去年も通った国道39号線を網走湖(アイヌ語:網走--チパシリ--幣場(ぬさば)のある島)から能取湖(アイヌ語:能取--ノトロ--岬の所)ヘ向けて走る。途中、網走市内で国道238号線(別名「オホーツクライン」)に入る。

 弱い雨だが一向に止む気配はなく、間断なくフロントガラスを濡らしている。能取湖は秋になると湖面が真っ赤に染まるほどのサンゴ草で有名なところ。湖の西岸を半分過ぎたぐらいのところに休憩所があったので、東屋に入って写真を撮った。近くでホオジロの声がしたが、この空模様ではまともな写真は撮れそうもない。

 止む無く車に戻り、時計を見たら5時半を回っていたので、ホテルに予定時間には到着できない旨の電話を入れ、ひたすら薄暗くなった道を走る。ところどころ見覚えのある景色があって、なんとなく懐かしい思いがした。天気さえ良ければサロマ湖のワッカ原生花園にも立ち寄ってみたかったのだが、諦めるしかなさそうだ。

 ホテルに着いたのは6時半少し前。早速チェックインを済ませてレストランで夕食。もう外は夕闇が迫り、シャンデリアの映った窓越しに見えるサロマ湖は雨粒で柔らかく滲み、湖面と空の境界が定かではなくなっている。

 夕食後、フロントで明日の朝食時間を尋ねたら7時とのことだったので、30分早くしてくれるよう頼んだら快く了解してくれた。部屋に戻ってカメラ・機材の点検、バッテリー充電状況のチェックを行い、携帯のアラームを午前4時にセット。明日の立ち寄り先の地図をカメラバッグに入れて北海道での初日を終えた。

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