チングルマ


 かれこれ40年の付き合いにもなる、かっての職場の友人に誘われて、立山・黒部アルペンルートを巡るバスツアーに行ってきた。最初に立山を訪れたのは、20歳台半ば、コーラスの友5人と共に名峰・剣岳の登山をしたときだった。この時の印象は今でも忘れない。まず最初に感動したのは山容の美しさ。ヨーロッパアルプスを想起させるような黒褐色の険阻な岩肌が天に向かってそそり立つ姿を前に、ただ呆然と見とれていた。

 剣岳の頂上に立って、休憩しながらコーラスをしていたら傍に居た女性が歌のお礼にと、雪渓の雪を溶かして紅茶を入れてくれた。まだカラオケなんてない時代のことで、素直に喜んでくれたのだろう。アルミニュウム製のコップで、熱さを我慢しながら飲んだ記憶が今でも鮮明に残っている。美味しかったなあ(笑)。以後、3度ほど室堂まで行く機会があったが、今ほど高山植物に興味を持っていなくて風景だけを楽しんできた。

 立山は、ご存知の人も多いと思うが、3,000m級の山々が連なる日本三大名山の一つである。また信仰の山としても歴史が古く、鎌倉時代初期に開山されたとも言われている。戦国期には、この地方を治めていた戦国の武将・佐々成政が羽柴秀吉に対抗すべく100名そこそこの部下を引き連れて厳冬期の立山を越えて徳川家康の居城のある浜松まで助力を求めて向かったが断られ、空しく同じ道を引き返した「立山さざら越え」の逸話がある。

 今回の旅行は、日程から見ても随分忙しそうな予感はしたが、案の定、ほとんど休む間もないくらいの強行軍だった。同行のツアー客は、もう少し年配の人が多いと思っていたが、幅広い年代の人が参加していた。どなたもスケジュールには協力的で、集合時間に遅れたことはなく、そういう意味では気持ちの良い旅だった。

05年8月5日(金)
午前7時20分名古屋駅名鉄バスセンター発 〜 名神高速道路・小牧I.C 〜 米原J.C 〜 北陸自動車道・魚津I.C 〜 宇奈月温泉 〜 トロッコ電車 〜 欅平 〜 トロッコ電車 〜 宇奈月温泉 〜 金太郎温泉

 この日は、上の日程を見てもわかるように、ただ乗物に乗っていただけで、トロッコ電車終点の欅平でも散策の時間が無く、とんぼ返り。なんとも言いようがない一日だった。
 トロッコ電車は屋根のみで両横に鎖が張ってあるだけ。まあそれも野趣があっていい。写真の「仏石」はお地蔵さんのように見えるが実は天然岩。黒部峡谷はどこも谷が深くて、流れる水のエメラルドグリーンが美しかった。

宇奈月温泉駅 トロッコ電車 仏石 欅平付近の峡谷

 宿泊は、北陸自動車道・魚津I.C 近くの「金太郎温泉」。名前の由来は、創業者が「金太郎さんのように全身に力が溢れ、元気一杯に、健康になるように」という願いをこめて名付けたものだそうで、湯量の豊富な75度の硫黄・塩化物の天然温泉がご自慢。夕食後、「越中おわら風の盆」という踊りの実演をやっていて、客も一緒になって踊っていた。私はちょっと遠慮して参加せず(笑)。

越中おわら風の盆の実演


05年8月6日(土)
金太郎温泉午前8時出発 〜 北陸自動車道・魚津I.C 〜 立山I.C 〜 立山駅 〜 (ケーブルカー) 〜 美女平 〜 (バス) 〜 室堂 〜 (トロリーバス) 〜 大観望 〜 (ロープウェイ) 〜 黒部平 〜 (ケーブルカー) 〜 黒部ダム 〜 (トロリーバス) 〜 扇沢 〜 長野自動車道・豊科I.C 〜 岡谷JC 〜 中央自動車道・小牧JC 〜 東名高速道路・小牧I.C 〜 午後8時名古屋駅到着

 立山駅は久し振りだった。相変わらず駅前の駐車場はマイカーでギッシリ埋まっている。そう言えば、前回ここを訪れたときも確か夏。仕事を終えてから車で名古屋を発ち、夜11時ぐらいに到着して車の中で寝たのを思い出した。食事はもちろん自炊。朝一番のケーブルカーで室堂に向かった。

 その点、今回は上げ膳据え膳の構え。行程の忙しさを除けば気楽なもの。ケーブルカーの出発時刻までの僅かな時間に立山駅前の土手のようなところで花を探したら、2,3の花が咲いていた。

ケーブル立山駅

ツユクサ

アカツメグサ


 ケーブルカーの立山駅は標高475m。美女平(977m)までの約500mを僅か7分で登ってしまう。美女平からは自家用車の乗り入れ規制がなされていて入山可能なのはバスと特定の許可を受けた車両だけ。ここから室堂までは定期観光バスに乗って約50分。春から初夏にかけては道の両側に7m〜10mも積った雪の壁の中を走る。これも初めて見た時には驚いたものだ。

 バスは高原地帯のつづら折れの道をゆっくりと走る。途中にある称名滝が見えるポイントでは止まって運転手が乗客に説明をしてくれる。これも以前のままの光景。次第に車窓から見る木の背丈が短くなり、ハイマツが目立つようになったと思ったら室堂ターミナルに到着。ここはすでに標高2,450m。一気に1,470mも高度を上げたことになる。

 当初の予定では、散策時間は1時間とのことであったが1時間45分あるという。ラッキー。バスを降りて早速散策路へ出た。空気はひんやりとして心地がいい。雲が多くなってきたものの、散策には影響なさそうだ。少し歩くと、まず目に飛び込んだのが白い花。ウスユキソウかと思ったけどよく見ればヤマハハコ(山母子・・・名の由来は、山に生えるハハコグサの仲間)。木道に沿って暫く花を撮影。

イワイチョウ タテヤマウツボグサ ハクサンフウロ カラフトマンテマ

イワカガミ ヨツバシオガマ タテヤマリンドウ ミヤマアキノキリンソウ クガイソウ

ヤマハハコ シナノナデシコ オトギリソウ ヤグルマソウ

[ 室堂で撮影 ]
 イワイチョウ、イワカガミ、ヨツバシオガマ、タテヤマリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、ヤマハハコ、オトギリソウ、タカネニガナ、タテヤマチングルマ、カンチコウゾリナ、ミヤマリンドウ、ウサギギク。

[ 黒部平で撮影 ]
 タテヤマウツボグサ、ハクサンフウロ、カラフトマンテマ、クガイソウ、シナノナデシコ、ヤグルマソウ、マルバタケブキ、オオバギボウシ。

タカネニガナ タテヤマチングルマ カンチコウゾリナ ミヤマリンドウ
マルバタケブキ オオバギボウシ ウサギギク

 室堂からトロリーバス、ロープウェイ、ケーブルカーを乗り継いで黒部ダム(黒四ダム)へと向かう。まるで乗り物ショーを見ている感じ。ケーブルカーは外から見るとそれほど大きいとは思わないが、中に入ってみると結構広い。ホームで待っていた客はかなりの人数で、"こんなに入れるのかな" と思ったけどスンナリ収まってしまった。

 時間が経つにつれ、次第に雲行きが怪しくなり、今にも一雨来そうな空模様。ふと室堂の方を見上げると、山の頂はもうスッポリと雲の中(写真左)。眼下には黒部湖が蒼い水を湛え、静かな表情を見せている(写真右)。

 堰堤の上を通って扇沢へ行くトロリーバス駅の方に向かうと、ダムにある二つの放水口から水煙を上げながら勢い良く水が噴出している。(写真左下)これは、6月26日から10月15日まで観光用に放水しているのだという。

 堰堤を渡りきったところに二つの建物があり、左側がダム建設の記念館となっていて、3階では建設当時の模様を紹介するビデオが上映されていた。

 記念館の入り口には、石原裕次郎主演の「黒部の太陽」のシーンにも出てきた「破砕帯」から湧出する水が導かれており、飲むことができる(写真右)。一口飲んでみたが冷たくて美味しい水だった。

 記念館右手の山の壁面には、ダム建設のトンネル掘削工事で亡くなった人たちへの鎮魂の意味を込めた銅像が作られている。黒四ダムの建設では百数十名もの犠牲者が出たといい、建設に要した年月が7年、延べ1千万人もの人手をかけた工事がいかに困難を伴うものであったかが偲ばれる。

 2日間にわたった旅行もいよいよフィニッシュを迎える。扇沢からトロリーバスに乗り、立山から回送してきたバスに乗り込んだときは既に4時を回っていた。ここから先はひたすら名古屋に向かって走るだけなので、ゆっくり眠っていこう。


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