希少植物の咲く山  

Vol.1

11年6月18日(土)
 最近、野原にも咲くネジバナなどのポピュラーなラン科植物を除いて、野生ランを登山道脇や散策路で見かけることはほとんどなくなった。その原因の多くは盗掘によるものである。今回訪れた山もその例外ではなく、希少植物が盗掘の被害に遭いその数を激減させてしまった。それに加えて、ササ、ヤマドリゼンマイ、テンニンソウなどの進出により在来の希少植物が駆逐され、これも減少の原因となっている。こうした現状から希少植物の保護を図るため、ボランティアによる防護柵の設置や侵入植物の除去作業が行われており、今回、野草仲間の呼び掛けに応じて私もその活動に参加した。

ヤグルマソウ クルマバツクバネソウ ヤマクワガタ ミヤマカラマツ
チョウセンゴミシ チョウセンゴミシ エゾノタチツボスミレ ???テンナンショウ

 現地集合時間は正午とのことであったが、その前に登山道でみられる花を撮影しようと、名古屋での集合時間は午前4時。空はようやく黎明の時を迎えてうっすらと明るみがさしつつある。登山口へ着いたのは8時を少々回った頃だろうか。標高は1300mの林道脇に駐車して車外へ出ると、空が曇っているせいかやや寒さを感じる。歩き始めるてまず目に飛び込んできたのはヤグルマソウ。その名の通り、鯉のぼりの矢車のような大きな葉が特徴。

マイヅルソウ
ヤマトユキザサ (オオバユキザサ)

 しばらく行くと今度はマイヅルソウが群生する場所へ出た。霧に霞む木立を背景にと、撮影ポジションやカメラアングルをいろいろ変えて撮影しているうちにどんどん時間が経ってしまい、気が付くと先を行く同行の二人の姿が見えなくなってしまった。林道からわずかに林の中へ入った辺りにヒメムヨウランがあるとの声に早速その傍へ行ってみると、ヒトデのような形をした花をいくつも付けた花が数株咲いていた。

ヒメムヨウラン
カモメラン

 今回の楽しみはなんといってもカモメラン。白地の花弁には濃いピンクの斑点がちりばめられており、なんとも可愛い花だ。もちろん初見花。因みに名の由来を調べてみると、「カモメ」は海で見られる「鴎」のことではなく、カモメの「メ=目」は「眼」ではなく、コガモやヨシガモなどの鴨の胸毛にある小さな斑紋のことをいう。カモメランの唇弁にある小さな多数の斑点を「目」と見立てて「鴨目」となったということらしい。

シロバナヘビイチゴ
トリガタハンショウヅル トリガタハンショウヅル ササバギンラン ササバギンラン

 午後からは本来の目的であるテンニンソウの除去作業。蚊などの虫が多いため、防虫ネットを頭からかぶっての作業。時折、小雨がパラつく中で参加者は熱心に作業に励んでいた。数時間の作業を終えたところで、ご褒美に希少植物の観察会が行われた。夜には保護活動の一環として高山植物の勉強会が行われ、最近特に問題となっている鹿の食害の現状などが報告された。

ヤブウツギ ベニバナノツクバネウツギ ボケ サラサドウダン
サラサドウダン シロバナニシキウツギ シロバナフウリンツツジ ムラサキツリガネツツジ

 翌日も午前中、ササやテンニンソウの除去作業を行った。晴れの天気予報に反してこの日も雨模様。おかげでレインスーツは泥だらけ。午後からは山荘付近を散策して野草の撮影。登山道沿いにはいろいろな樹木の花が咲いており、初見花も多かった。林の中にはツルシロカネソウの群落もあり、まだ花が健在であったのは嬉しい誤算。今年はこの花に縁があるらしく、これで3度目のご対面。帰路につく頃には雨が本降りとなり、傘をさしての下山。

ツルシロカネソウ
タチカメバソウ キバナノコマノツメ アマドコロ 朝露



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