八ヶ岳の野草  

Vol.2

11年6月14日(火)・15日(水)
 八ヶ岳登山は若い頃からの夢だった。しかし、高校時代にクラブ活動で左足の関節を痛めてから、激しい運動やスキーのような膝に過度の負荷がかかる運動をすると膝関節に水が溜まり、歩行すらおぼつかなることを何度も経験したので本格的な登山は諦めていた。ところが退職後、野草散策をするようになって野山を歩いているうちに、徐々に脚の具合が良くなり、多少のことでは関節の異常が生じなくなった。野草への興味が増し、かねてから八ヶ岳のツクモグサを見たいという想いが募っていた折、登山経験豊かな野草仲間が同行してくれたこともあって宿願を果たすことができた。

左:横岳、右:大同心

 今回の登山は、八ヶ岳・硫黄岳から横岳に至る稜線上に咲くツクモグサを見るのが第一の目的。硫黄岳への登山コースはいくつかあるが、その中でも山の初心者にでも登れそうな、桜平から夏沢鉱泉、夏沢峠を経て硫黄岳に至るコースを選んだ。当初は天気予報で晴れが続きそうな6月7日〜9日の日程を予定していた。念のため硫黄岳山荘にツクモグサの開花状況を問合せたところ、今年は花の時季が遅れていてまだ蕾ばかりということであったので、1週間日程をずらしての山行きとなった。

クリンソウ シロバナヘビイチゴ シロバナヘビイチゴ ウスバスミレ
タチツボスミレ タチツボスミレ ウスギオウレン ウスギオウレン

 早朝5時に名古屋を出発して、桜平の登山口に着いたのは8時少し前。ウイークデーだというのにすでに多くの車で駐車スペースはほぼ満車状態。なんとか車を停めれる場所を確保していざ出発。登山道にはシロバナヘビイチゴが白い花を朝露に濡らして光っていた。ところどころにスミレの姿。ミヤマスミレもあったのだが撮り漏らしてしまった。少し進んで沢の付近まで行くとキバナノコマノツメが群生していた。この花はこれまで高山帯の岩場でした見たことがなかったのに、あっけなく見ることができ少々拍子抜けした感じ。

キバナノコマノツメ
キバナノコマノツメ

 登山道は、鳴岩川沿いの緩やかな道を進み、夏沢鉱泉を過ぎるとやや傾斜が強くなる。それでもオーレン小屋まではそれほど急な坂道ではない。夏沢峠が近付くにつれていよいよ山道らしくなってきた。この頃になると、欲張って4本も持ってきた交換レンズの重みがズシリと肩に感じられるようになった。途中で野草の写真撮影にかなりの時間を費やしたため、夏沢峠に着いた時にはすでに昼を迎えていた。予定では12時に硫黄岳山荘に到着の計画であったがベタ遅れ。しかし、これは織り込み済みのことで、4時頃までに山小屋へ入ればよいので気持ちは楽。

イワネコノメソウ
イワセントウソウ コミヤマカタバミ ヒメイチゲ ヒメイチゲ

 夏沢峠で昼食をとり、いよいよ硫黄岳への登りに入る。最初はシラビソなどの木立に囲まれた尾根筋を登る。標高2500mm付近まで登るとハイマツ帯に入り登山道はジグザグのガレた道に変わる。花を探しながら歩くのだが、目にするのはコメツガぐらい。左手に爆裂火口が見え始めると硫黄岳頂上まではあとわずか。登山道の脇から下を覗き込むと鋭く切り立った岸壁になっている。

クリンユキフデ ヒメウスノキ ミヤマハンノキ オサバグサ
左:横岳、右:大同心 御嶽山 乗鞍岳 穂高連峰

 硫黄岳の山頂に立って周囲を見渡すと、左手には御嶽山の巨大な山塊が聳え立ち、その右には乗鞍岳、穂高連峰と北アルプスの雄姿が続く。晴れていればもう少しクッキリと山容を写すことができただろうが、生憎空は薄曇り。景色を楽しんだ後、少し下って硫黄岳山荘に着いた。時刻は午後3時。山小屋に入って、外から帰ってきたばかりの女性スタッフにツクモグサの様子を聞くと、横岳の手前にも咲き始めているとのこと。そこへは30分もあれば行くことができるというので荷物をデポして撮影に向かった。ところが教えられた場所に着くまでに1時間近くもかかった。山を歩き慣れた人の時間感覚とはこれほどまでに差がある。

ツクモグサ
ツクモグサ

 横岳の鎖場付近まで行くとようやくツクモグサのお出まし。途中、たった1株だけオヤマノエンドウが咲いていた。これも見たかった花の一つ。ウルップソウも見かけたがまだ小さくて蕾の状態。もう少しいろいろな花が見られるかと思ったが、やはりここでも花の開花が遅れているようだ。撮影している間に雲が多くなり寒くなってきたので山小屋へ戻る。客は全部で10人ほど。大きな部屋には蚕棚を思わせるような上下2段のベッドが造られている。消灯が8時ということで、後は懐中電灯が頼り。しばらく撮り終えた写真を見ながら時を過ごし、就寝は9時ごろだっただろうか。

コメバツガザクラ
キバナシャクナゲ ウラシマツツジ オヤマノエンドウ オヤマノエンドウ

 翌日は5時に起床。窓から外を見ると雲海が広がっていた。早い時間に外へ出かけてもツクモグサは開いていないので、ゆっくり朝食をとり、再度ツクモグサの撮影に向かった。空は依然として曇ったまま。撮影していたら赤岳方面から数人ずつのグループがやってきた。横岳の向こうの様子を尋ねるとやはり開花している花は少ないとのこと。他に花が見られるわけでもないので、しばらく撮影した後に下山開始。往路と同じく夏沢峠で昼食をとり、桜平に戻ったのは午後3時ごろ。八ヶ岳へは夏の花の最盛期にもまた来てみたいと思うが、果たしてそんな機会に巡り合えるだろうか・・・。

左:横岳、右:赤岳 横岳 正面:赤岳 左:横岳


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