打  見  山  


 「打見山(うちみやま・・1,108m)」は、琵琶湖の西・比良山系第二の高さを誇る蓬莱山(1,174m)に連なる山で、主峰「武奈ヶ岳(1,214m)」の南側に位置する。頂上までは山の北側に造られている「びわ湖アルプスゴンドラ」を利用すれば僅か8分で登ることができる。登山を楽しむ人は、山の南側の葛川坊村・明王谷登山口から入り、頂上をめざす。

 この山も花の山として名が知られているようで、特に春から初夏にかけて多くの花を見ることができる。ガイドブックによれば「京都、滋賀周辺の入門の山」と書かれており、登山道が沢筋に沿って設けられていることから、変化に富んだ渓流を眺めつつ比較的容易に登ることができる。

イワウチワ



06年4月29日(土)
 打見山へはゴンドラで登って葛川坊村へ下山しようかとも考えた。花を見るためだけだったらそれが賢明かもしれないが、7月の大雪山登山に向けて脚力を鍛えることも目的の一つであったので、登山口から歩いて登ることとした。

 あまり早く出かけても花が開いていないのではつまらないと、いつもより30分出発を遅らせて朝6時半に自宅を出発。名神高速道路「竜王I.C」から国道477号線を走り、琵琶湖大橋を渡って国道367号線に入る。地図を見たかぎりではそれほど時間はからないだろう思っていたが、現地に着いたときは既に9時を回っていた。登山口付近では大勢の登山者が葛川明王院の方へ向かっている。どうやら武奈ヶ岳を目指しているようだ。

 打見山への登山道に入ったのは私一人。登山口に立てられた案内看板を見てルートを確認し、いよいよ出発。ここから牛コバまでは林道のなだらかな道。歩き始めると、ミヤマキケマンや先日見たばかりのツルネコノメソウなどが山の斜面に点々と咲いている。良く見るとツルネコノメソウは花の形が様々で、それぞれ種類の異なる花なのかなと思って帰宅後に調べてみたがそうでもないらしい。

ツルネコノメソウ。花の形がそれぞれに異っている。

ミヤマキケマン イワナシ スズシロソウ ? ヤマルリソウ

 側溝脇に咲いていた白い花は(写真上・イワナシの右隣。)、ハクサンハタザオのようにも見えるしタネツケバナとも思える。通りがかった人に聞いたら「スズシロソウ」ではないかとのことだった。アブラナ科の花はどれも良く似ていて見分けがつかない。葉の形を頼りに調べてみたのだが、図鑑には明らかに同じものと断定できる花がなかった。

 1時間ばかりで林道の終点、牛コバに着いた。ここからは本格的な山路に入る。渓流に沿った山路は、時々小さな滝などもあり絶えず瀬音が耳に入る。辺りは新緑の時季を迎え、木々の瑞々しい若葉が登山路を包み、歩いていると清々しい気分になる。山路は所々で沢を渡るが、数本の丸太を組んで作られた橋はどれもが朽ちかけていて、今にも壊れそうで心もとない。

 登山道脇や苔むした岩肌のところどころにスミレがへばりつくように咲いている。しばしば登山道から外れ、沢のほとりへ降りて花を探す。岩陰に小さな白い花の群生を見つけカメラで覗いてみると、シベの頭に真っ赤な帽子を被ったシロバナネコノメソウ(ハナネコノメソウ)だった。肉眼でちょっと見たぐらいではわからないような可愛い帽子に、思わず "綺麗だなあ" と言葉が漏れた。花に関心が薄い登山者だったら雑草が咲いているぐらいにしか思えないかもしれない。

シロバナネコノメソウ。シベの赤い帽子がなんとも可愛い。

ここでもスミレが登山道の所々に咲いて目を楽しませてくれる。


 高度が上がるにつれて花の種類も増えてきた。ミヤマカタバミやニリンソウがようやく目を覚ましておもむろに花を開き、お出迎えをしてくれる。山肌の急な斜面ではエンレイソウが大きな葉に似合わず小さくて目立たない褐色の花を真ん中にちょこんとつけている。なんとなくユーモラスな花だ。

ミヤマカタバミ ニリンソウ
エンレイソウ バイカオウレン

 今回、わざわざ湖西の打見山へ来た最大の理由は、図鑑や花巡りガイドブックなどに紹介され、その美しさにかねがね心が魅かれていたイワウチワを、一目なりとも見てみたいと思ったからだ。この山にそれがあると知り、連休を心待ちにしていて早速訪れたという次第。とにかく何があってもイワウチワがあるところまでは登ろうと心に決めてひたすら頂上を目指した。

 かなりの急坂を越えて、テラスのようなところまで来たら沢に滝が見え、ここで昼食をと腰をかけて辺りを見回すと、なんと、そこにイワウチワが群生していた。昼食を後回しにして早速撮影。やはり実物は期待に違わず美しい。

急斜面を彩るイワウチワ。淡いピンクがことのほか美しい。

 地図を見ると、そこは時間的には頂上へ行く路のおよそ中間点。しかし時計は既に2時を回っていた。このまま頂上へ行ってから戻ると日暮れ前までに下山できない恐れがある。元々山頂を極めることが本来の目的ではなかったので、もう少し上の様子を見てから下山しようと歩き始める。山頂付近のスキー場から少し下ったところにオオイワカガミの群落があるらしいが、今からではちょっと無理。

 意を決して下山と決め、登ってきた道を引き返す。もちろん、ただ歩くだけではなく、撮影は続行。時々往路では気がつかなかった花を見つけては撮る。ショウジョウバカマは帰り道にと、敢えて撮っていなかったもの。地味な花が主体なので名前が分らないものが多い。

ショウジョウバカマ ツクバネソウ スミレサイシン ???
若葉の芽吹き ナガバモミジイチゴ ダンコウバイ ギブシ

 往路では自然と草花に目がいっていたので木の花への関心が薄かった。帰路はどちらかと言えば見過ごしてしまいそうな花を中心に撮った。登山口付近まで戻ったらすっかり日も翳って、冷気が肌に感じるようになった。時計を見るともう4時20分。すっかり人気のなくなった駐車場に戻り、時間短縮のため名神高速・京都東I.Cから帰ることとした。帰宅したのは午後8時丁度。収穫も多く、満足した一日だった。

モミジチャルメルソウ ヤマザクラ 面白い形の実?花? コチャルメルソウ ?
クロボシソウ マムシグサ これは木の花だけど ユキヤナギ

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