栂池自然園  


 「栂池(つがいけ)自然園」は、長野・富山・新潟の三県が接する県境に聳える白馬岳(2,932m)からほど近い乗鞍岳(2,487m)の山腹に広がる高原地帯。日本の屋根とも称される北アルプスのほぼ北端に位置し、冬には五竜、八方尾根、岩岳と連なるスキーのメッカとしても有名な所である。

 20歳代から30歳代半ばにかけては、毎年2月の建国記念日前後に岩岳スキー場へ行くのが恒例行事になっていて、隣接する栂池にも時々足を伸ばすことがあった。その頃は花に興味がなくて、もっぱらスキーを楽しむだけだったのだが、最近になってここが花の山としても有名であることを知り、懐かしさも手伝って機会があれば訪れてみたいと思っていた。


06年8月19日(土)
 前日の金曜日、夕食後に撮影機材などをチェックしながらリュックに詰め、行程のコースをインターネットで確認。早朝の出発に備えて午後10時に就寝。4時間半も眠れば多分大丈夫だろうという計算。

 午前2時半、携帯のアラームで目が覚めた。窓の外は星空。予報どおり空は晴れているようだ。リュックを車に詰め込んで2時50分に自宅を出発。朝食はコンビニで買ったパンと珈琲。いつものように車を走らせながらの味気ない食事だ。街はまだ眠っていて、行き交う車も少ない。幹線道路脇のスタンドでガソリンを補給し、名神高速道路へ入ったのが3時15分。ここから目的地までは275km、約3時間のドライブである。

イワイチョウ


 栂池高原のゴンドラ駅駐車場に着いたのは6時20分。途中の道路が空いていて快適だったためか、休憩をとることも忘れてしまって予定より少し早く到着。駅の周りには既に100人近い登山客が来ており、朝食をとったり身拵えをしたり登山の準備に余念が無い。ゴンドラの始発時刻、7時30分までにはまだ1時間ばかりの余裕があったので近辺の花を撮って時間を過ごした。

アサガオ ツユクサ ゲンノショウコ コマツナギ

 そうこうしているうちに、登山客を載せた観光バスなどが次々に到着してどんどん人数が膨らんでいく。ありがたいことに始発時刻を早めてくれて、7時10分には出発することができた。自然園まではゴンドラリフトとロープウェイを乗り継いで約30分。途中、ロープウェイの窓からは朝日で雪渓を赤く染めた白馬岳が威厳のある姿を雲間に覗かせていた。

 ロープウェイの到着駅から自然園の入り口にあるビジターセンターまではほんのわずかの距離。広い道の両側には早くも随所に花が見られる。伊吹山ではとっくに咲き終わっているエンレイソウがまだ花を付けていたのには驚いた。そういえば、ここは名古屋の遥か北に位置しており、しかも標高1,900mの高所に立っていたのだ。

ノリウツギ エンレイソウ ハクサンボウフウ キオン

 白馬岳の風景写真を撮りたかったのだが、ロープウェイを降りた頃から山はスッポリとガスに包まれていまい、残念ながら幻の白馬岳になってしまった。でも、私の脳裏には今でもはっきりと気高さを備えた白馬連山の姿が焼きついている。

 自然園に入ったとたん、青い小さな花が一面に咲いているのが見えた。よく見るとタテヤマリンドウ。昨年、立山の室堂で見たときと比べると、心なしか花の色が薄いように感じられた。それにしてもこれだけ群生していると見事。その周りにはイワイチョウの純白の花。散策路は木道が整備されていて歩き易い。湿原を彩る花に見とれてついついシャッターを切るのも忘れてしまいそうな光景が続く。

タテヤマリンドウ イワイチョウ ベニバナイチゴ キヌガサソウ
ニッコウキスゲ ワタスゲ イブキトラノオ ミヤマアキノキリンソウ

 自然園は一周約6km余り。高低差170mと程よい広さとアップダウン。雁股池から展望湿原へ至るやせ尾根が少し急坂になっているくらいで、歩くには苦痛を感じない。入園者の中にはサンダル履の女性もいたが、これはチョットいただけない。散策路すべてに木道が敷かれているわけでなく、ガレ場やヌカルミもあるので安全確保のためには登山靴とまでは言わないものの、せめてトレッキングシューズぐらいは用意したい。

エゾシオガマ ヒオウギアヤメ ホソバノキソチドリ オニシオガマ
ギンリョウソウ ハクサンオミナエシ イワカガミ ハナチダケサシ
クルマユリ イワショウブ ミソガワソウ オオバミゾホオズキ

 今回、栂池へ来た目的の一つはミソガワソウ。この花がどこに咲いているかネットで探していたら、手ごろに見られそうな場所で最も近かったのが栂池自然園だった。と言っても名古屋からは相当な距離がある。群生しているのを見つけたときはやはり嬉しかった。それにしても、あれだけ沢山咲いているとは思わなかった。

コガネイチゴ ミヤマキンポウゲ マイヅルソウ ミヤマホツツジ
ミヤマカラマツ ミツバオウレン オタカラコウ ミヤマツボスミレ
アカバナ ミヤマトリカブト オオイタドリ シナノキンバイ

 このホームページの写真は撮影した日に見れた花で、種類が異なるものをほとんど掲載することとしている。その理由は、私自身が後日ふと思い立ってどこかへ出かけるときに役立つよう、何時頃どこでどんな花が咲いているのかを記録しておくため。もう一つはこのホームページを見ていただいた方が、花を見て何がしかの参考になれば、という気持ちから。したがって、ベストアルバムではないので駄作も多い。というより殆どが駄作か(笑)。

ミヤマカラマツ ノウゴウイチゴ オクヤマガラシ ヨツバシオガマ
オオバタケシマラン オオヒョウタンボク シモツケソウ ハクサンシャクナゲ

 この日、初めてお目にかかった花が20種類近くあった。「所変われば品変わる」と言うが、まさにその通りで、季節、場所が異なるといろいろな花を見ることができる。今年の3月以降、新たに見れた花は約200種類になった。これで私の「花ミニ図鑑」も500種類になるが、これからの整理が大変。とうしよう。

シロバナクモマニガナ ソバナ タテヤマアザミ ツルリンドウ?
コイチョウラン ??? ツマトリソウ ズダヤクシュ
サラシナショウマ カラマツソウ ゴマナ オオレイジンソウ

 栂池自然園での一日は短かった。今回は、散策路を行きつ戻りつしたので8kmぐらいは歩いただろうか。想像していた以上に花の種類が多く、70種類以上の花を見ることができた。ここからは姫川源流も近いので来年の春にでもまた訪れてみたい。午後4時に下山して自宅に着いたのが8時。往復580kmにも及ぶドライブとなったがさほどの疲れも無く、大いに満足できた一日だった。



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