藤 原 岳  

Vol.1

06年3月18日(土)
 2,3日前までは藤原岳ではなく、滋賀県の霊仙山(1,094m)へ行くつもりだったが、今年は冬季に雪が多かったこともあって、早春に咲く花の開花が大幅に遅れており、インターネットでフクジュソウの開花状況を調べてもよく分らなかった。そんな折、職場の友人から藤原岳6合目でフクジュソウが咲いていたとの情報を得て、急遽、行き先を変更した。

岩肌に咲く福寿草


 ガイドブックによると、登山に要する時間が「登り・・2時間20分、下り・・1時間45分」となっており、自分の脚力を考えると2割ほど余分にみておく必要があるから、登り・下りの所要時間を5時間と見込んだ。これに撮影や昼食の時間などで3時間、現地までの往復の2時間を加えると約10時間となる。

 そんなわけで、午前6時に自宅を出発した。登山口へは7時キッカリに到着。三重県側から藤原岳への代表的登山コースは、「大貝戸コース(表コース)」と「聖宝寺(しょうほうじ)コース(裏コース)」がある。
 聖宝寺は、平安時代初期の807年(大同二年)、天台宗の伝導大師・最澄によって開基された。その後、織田信長の家臣滝川一益に焼き討ちされたが江戸時代初期の1659年(万治二年)に臨済宗の寺として再興され、現在でも堂々とした本堂をみることができる。

 有料駐車場に車を入れたところ、先に止まっていたのは1台。鈴鹿の山は登山者が多く、いつも駐車スペースの確保に苦労するので心配していたが、早出が功を奏した。早速スパッツを装着し、登山靴に履き替える。山登りは数年ぶりのことなので果たして頂上までたどり着けるか、少々不安。でも、疲れたら無理せず引き返せばいいだけのこと。

 聖宝寺入口手前の道を右に行くと登山路がある。寺の近くにはフキノトウが数株生えていたが、その他には花らしいものは見当たらない。登山路はいきなり240段の階段から始まる。最初は道も広く、ルンルンのハイキング気分だった。ところが沢を渡って山道に入ったとたんに傾斜が急となり、道はぬかるんで滑りやすい。そんな山路が延々と続く。

 しばらくは見る花もなく、ただひたすら登るだけ。少し平らなところへ出ると、ちらほらとフクジュソウが咲いているのが見えた。カメラをセットして撮影開始。今回の撮影機材は、カメラの他、マクロレンズ、ズームレンズ、ローアングル三脚、アングルファインダー、リモートスイッチを用意して完全装備(のつもりだった)。


場所によって花の咲き具合はまちまち
 
岩や風倒木の間に咲くフクジュソウ

 よく見ると、フクジュソウに混じってところどころにセツブンソウの姿があった。生育環境が厳しいためか、背丈は5cmにも満たないのではないかと思われるほど小さい。

セツブンソウ


 昨年までセツブンソウを見たこともなかったのに、今年は石雲寺、伊吹山、それに藤原岳といろいろなところで見ることができた。それぞれに姿形が異なるのも野の花ゆえのことで、環境にうまく適応しているからなのだろう。

セツブンソウ


 撮影を終え、雪がたっぷり残った山道に閉口しながら再び頂上を目指して登る。上に行くにしたがって道のぬかるみが更にひどくなった。そのうち積雪のため登山道がどこだかわからなくなってきた。先に通った登山者の靴の踏み跡を頼りに進む。単独行のため、ここで滑落すると誰も助けてくれる人がいないので慎重にならざるを得ない。

 そろそろ頂上間近というところで周りを見渡すと、フクジュソウも蕾ばかり。この頃、一段と空模様がおかしくなってきた。この分では間もなく雨が降り出すのは間違いなさそうで、迂闊なことにカメラの機材ばかりに気をとられ、雨具の用意をしてこなかったため、意を決して下山することとした。山路では下りに注意が必要だ。ましてこんなコンディションではなお更のこと。

 帰り道に再度フクジュソウの撮影をしていたら、ポツポツと雨。それほど雨脚は強くないが次第に本降りになりそうな気配。数枚の写真を撮って早々に引き上げることにした。

フクジュソウは里でも見かけるが、やはり山に咲くものが美しい


 下るにつれ、次第に雨脚が強くなってきた。雨は上着を濡らし、さらにセーターにまで及んでいる。足を速めて出発点の車まで戻ったら時刻は丁度午後2時。もし頂上まで行っていたとしたら1時間ほど余分にかかっただろうから、概ね計算どうりの所要時間だったことになる。

 今回の山行きは、第一の目的はフクジュソウの撮影にあったが、もう一つは、夏に予定している大雪山への旅行に際して、自分の体力を事前に確かめておいて、その結果によって旅行の行程を見直すための準備の意味もあった。今、こうして登山記録を書いていて疲労感はさほどでもないが、大腿部に張りがある。この調子ではもう少し鍛錬しておかないと、予定したコースをすべて回るのは困難かもしれない。


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